2023.08.10 仕事術
第5回 どうする議会事務局①
元所沢市議会議員 木田 弥
地方自治は議会と首長(行政)の二元代表制であるということは、ご存じかと思います。
改めて、その意味を確認しておきましょう。「絶対的権力は絶対的に腐敗する」(思想家・歴史家ジョン・アクトン)という言葉があるように、権力の一極集中は、最終的にはよい結果を招かないということが、歴史の教えるところであり、権力の腐敗を防ぐためには、権力を分立させることが必要であるという合意が、17世紀頃から欧州を中心に形成されてきました。
「国の権力が一つの機関に集中すると濫用されるおそれがあるため、三つの権力が互いに抑制し、均衡を保つことによって権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障しようとする考え方です」と参議院のウェブサイトに三権分立が説明されています(参議院ホームページ「国会のしくみ」(https://www.sangiin.go.jp/japanese/kids/html/shikumi/index.html))。
地方自治では、司法は国家に属するため、立法部門である議会が行政部門である執行部をけん制する二元代表制になっています。
議会は二元代表制の一方の代表でありながら、議会を支える議会事務局の職員は執行部側の職員で構成されており、その人事権は基本的には執行部側にあり、議会には与えられていません。この最大の矛盾を抱えながら、議会事務局は議会内に存在しています。この矛盾点を前提として、議員は議会事務局及びその職員とどのような姿勢で付き合っていくべきかについて、改めてお話しします。
議会事務局との付き合いは、なかなかに悩ましい
議会事務局なしで、議員だけで議会を運営することが事実上、不可能であることは、議員の方ならよく分かっていると思います。議会事務局職員の方も、自分たちがいなければ、議会がうまく機能しないことは、よく理解されていると思います。議員は議会事務局の力を借りなければ、議場の電気すら点灯できません。
議員にとって不可欠な議会事務局でありながら、議会は議会事務局職員の人事権すら有していません。議長になれば、少なくとも議会事務局の異動に際して、あらかじめ打診があるという話も聞いていましたが、私が議長のときには、そういったことはありませんでした。人事権だけでなく、議会は予算編成権も与えられていません。そのため、議会事務局の職員を増やそうとしても、簡単にはできません。
我が市議会では、議会としての次年度予算の希望を述べることはできますが、希望がそのまま通ることはありません。
この事実は、議員にとってのみならず、議会事務局職員にとっても、悩ましい点だと思います。議会事務局職員にすれば、一体どちらを向いて仕事をすればよいのか分からないからです。
議会事務局に異動した以上は、議会の一員としての立場に基づいた活動が求められます。
私が知る限り、議会事務局職員は、あくまでも議会の一員として、議会、そして議員のために懸命に働いています。しかし、議員の議会活動を積極的に支援したところで、議会活動が基本的には執行部のけん制機能である以上、執行部の評価と連動しにくいという事実はあると思います。つまり、議会事務局は執行部側でありながら執行部に不利となる動きに加担する、というアンビバレントな状況に置かれているのです。
ですから、もし私が地方公共団体の職員だったとしたら、議会事務局への異動を希望しないでしょう。それは、これまで述べた理由によります。
また、地方自治法上の権限を有する議会の“構成員である議員”との付き合いも実にやっかいです。住民にもやっかいな方がいますが、議員の言いがかりは、単なる住民の言いがかりとは違って、地方自治法上の議会の権限に裏打ちされた言いがかりですので、邪険に扱えません。