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2023.07.10 仕事術

第4回 どうする議長選②

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人事の借りは人事で返せばよいだけのこと

 今回の抗争では、我が陣営に対していくばくかの非難と批判が寄せられました。その中で最も大きかったのが、「何も、戦前からある組織政党と人事で手を組む必要はなかったのではないか。そこまでやるのはちょっと信じられない」という指摘でした。確かに、その組織政党と我が会派は、考え方も方向性も全く違いました。しかし、特にこの人事抗争をめぐってその組織政党と政策協定を結ぶことはありませんでした。あくまでも人事のみの取引でした。議長選挙の票に色はついていません。1票は1票なのです。
 次に大きかった批判が、B議員を議長候補として擁立したことでした。B議員は、議場での執行部のやりとりなどもパフォーマンス型、つまり大声を張り上げて執行部を震え上がらせるタイプの政治手法でした。そのため、B議員が議長になることに、当時の市長も執行部の権力中枢も相当の抵抗を感じていたと、後に人づてに聞きました。本来であれば監査委員もご遠慮願いたかったようです。
 しかし、人事は人事だけのことです。権力をめぐる闘争とはそういうもので、あらゆる可能性を排除せず戦略を構築し勝利を目指すことが重要です。いうなれば選挙と一緒です。実際に国政における与党政党も、政権奪取のために、かつてのライバル政党を抱き込み、ライバル政党の総理大臣と官房長官を擁立し支えたのです。
 こうした抗争を避けて通るという選択も可能です。しかし、議員となったからには、やはり議長選挙を人ごととして捉えず、「議長選出権力」を目指すべきと私は考えていましたし、実際にその後の我が市議会は、この人事抗争をきっかけに議会基本条例の制定をはじめ議会改革が大きく進みました。2階建て構造の地方議会で、2階にある様々な権限を利用することができる2階への階段が造作できるきっかけとなったということです。
 また、評論家的な「住民不在だ」という批判もありました。しかし、自然閉会に持ち込んだのは対立する会派であり、その裏に見え隠れしていたのは、議長選出に関与したいという動機を持つ執行部の権力中枢でした。そもそも、自然閉会に持ち込むというやり方は、議会にとっては禁じ手であり、本来、あってはならないことです。戦争を有利に進めるために生活基盤であるダムを破壊するような野蛮なやり方です。批判をするなら、まずは自然閉会というシナリオを画策した陣営とそれを示唆した人々に対してするべきでしょう。
 今回紹介した事例、つまり少数会派が主導して議長選出権力を奪取する過程は、様々な要素が重なって起こったことであり、そういう点からすれば運がよかったともいえます。一歩間違えれば、我が会派は冷や飯食いの境遇になるところでした。
 しかし、本当の意味で住民主体の議会をつくりたいという意欲があるなら、まず議会の改革が必要であり、そのためには議長選出権力への関与は必要条件です。議員各位の今後の奮闘をご期待申し上げます。ただし、議長選出権力は善用されてこそ意味があるのであり、この権力が執行部の権力中枢と結びつくと、地方公共団体に強圧的な体制をもたらします。そうした権力は、あくまでも首長と対決するための権力として、あるいは住民自治を本当の意味で前へ進めるための権力として利用してくださいね。
 後日談です。当時の我が会派の私を含む若手議員3人は、皆、期せずして議長に就任しました。一方、その後、会派はバラバラになりました。私は、前出のD議員とともに新たな会派を結成。この会派も引き続き「議長選出権力」を私の在任中は、ほぼ維持し続けました。
 さて、次回は、「どうする事務局」です。今回の事例でも少し紹介しましたが、議会事務局は、一般的には、当然、議会の議事運営に議員以上に通じています。それが諸刃(もろは)の剣の側面もあります。議会事務局をどう捉えるのか、どう付き合えばよいのかについて、私の経験をもとにお伝えします。

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◆書籍情報
『自治体議員が知っておくべき政策財務の基礎知識―予算・決算・監査を政策サイクルでとらえて財政にコミットできる議員になる―』(2021/3/11発売開始)

江藤俊昭 新川達郎 編著(定価3,300円 (本体:3,000円))
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 自治体議員が地方財政に主体的に関与・改善したいと考えたときに、本書を読むことで、政策財務の考え方、特に予算・決算・監査に関する基礎的知識や方法論を紹介。先進的な議会の予算決算に関する取り組みや予算案修正の際の考え方や手続き、具体的な修正の手法を知ることができる。

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