2023.06.26 政務活動費
第7回 新聞の購入
【広島高岡山支判平成29年3月30日】
(ウ) 新聞の購入に係る費用
新聞は、日々変化する政治・経済等社会の情勢について最新の情報が記載されており、情報を簡易、迅速かつ広範囲に収集する有効な手段である。それ故、新聞を購読することは、社会情勢や世論を市政に反映させるのに有益であるといえるし、上記新聞の利点に鑑みれば、会派控室のみならず、その他の議員事務所や自宅で新聞を購読することも、議員としての市政に関する調査研究に密接に関係するものといえる。
したがって、新聞購入に係る支出については、調査研究活動のための支出として合理性を欠くと認められるような事情がない限り、資料購入費として許されるものというべきである。
この点、1審原告は、新聞の購読は市政に関する調査研究以外の目的でも行われうるから、その代金は案分されなければならない旨を主張する。しかしながら、前説示のとおり、新聞は、日々変化する政治・経済情勢について最新の情報等が掲載されており、広範囲の情報を簡易かつ迅速に収集する有効な手段であるから、新聞を購読することが議員の議会活動の基礎となる調査研究と合理的関連性を欠くということはできず、その全額について、使途基準に適合しないということはできない。
また、1審原告は、こうした判断が、案分を認める自動車燃料代等との整合性を欠く旨主張する。しかしながら、使途基準の適合性いかんは、それが不当利得に基づく返還請求権の要件である「法律上の原因」の有無の問題であることに照らすと、本来、自動車燃料代等のように可分な費用を除き、それに適合するかしないか(すなわち、法律上の原因があるかないか)のいずれかとならざるを得ない。そうすると、可分な費用である自動車燃料代等の一部については、自動車の利用状況等に照らし、その一部について使途基準への適合性を否定することはあり得ても、そこから当然に、新聞購読料等の不可分な費用についても同様に一部について適合性を否定すべきことにはならないから、1審原告の上記主張を採用することはできない。
東京高判平成28年12月21日では、一般新聞の購読は、一般教養の取得に資する面があり、議員にふさわしい教養を身につけておくことや、日々変化する政治、経済及び社会の情勢について最新の情報を取得しておくことは、県民の声を県政に反映させるための前提として必要な活動であり、そのために毎日発行される一般新聞を購読することは、目的に適合した合理的な手段といえ、新聞の購読は、調査研究活動と合理的関連性又は必要性を有するものであり、新聞の購読について必要性・合理性があると判示している。
さらに、複数の新聞の購入についても、新聞の内容が、それを発行する新聞社の主義主張や関心を反映して決定されるものであることに照らすと、多数の新聞の内容を比較することは、できる限り主観を交えない社会情勢等の変化を把握する上でも、社会情勢等に対する各新聞社の見解ないし関心事項を広く理解する上でも有意義なものであることから、政務活動費による複数紙の新聞の購入の必要性及び合理性を認める考えを判示している。