2023.05.25 コンプライアンス
第89回 地方議会の役割及び議員の職務等の明確化等に関する地方自治法の改正/初議会における執行機関に対する出席要求
初議会における執行機関に対する出席要求
一般選挙後の初めての議会において臨時議長の下で議長選挙を行うに当たり、執行機関が出席している議会があるが、どのような手続により出席しているのか。
一般選挙後には、新たな議会の体制を整えるため、法107条に基づき出席議員中の最年長議員が臨時議長となり、仮議席の指定と議長選挙を行う必要がある。
【法107条】
第103条第1項及び前条第2項の規定による選挙を行う場合において、議長の職務を行う者がないときは、年長の議員が臨時に議長の職務を行う。
ここで議長選挙において、執行機関が議場に出席している例が散見され、その出席理由としては新しく選挙で選ばれる議長・副議長に対するお祝いと議会に対する敬意により出席しているといわれる場合がある。
そこで考察するに、そもそも議長選挙において執行機関は議場に出席することができるかといえば、①法121条1項により、執行機関は議長から出席要求を受けた場合に出席をする義務を有するのであって、自らの判断で出席することを法律上は想定していないこと、②執行機関が議場に出席するに当たっては、議会の審議に必要な説明のために出席することとされていることが要件となる。
【法121条】
① 普通地方公共団体の長、教育委員会の教育長、選挙管理委員会の委員長、人事委員会の委員長又は公平委員会の委員長、公安委員会の委員長、労働委員会の委員、農業委員会の会長及び監査委員その他法律に基づく委員会の代表者又は委員並びにその委任又は嘱託を受けた者は、議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、議場に出席しなければならない。ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由がある場合において、その旨を議長に届け出たときは、この限りでない。
② 第102条の2第1項の議会の議長は、前項本文の規定により議場への出席を求めるに当たつては、普通地方公共団体の執行機関の事務に支障を及ぼすことのないよう配慮しなければならない。
すると、①において臨時議長がそもそも執行機関に出席要求することができるのかという問題が生じる。臨時議長は出席議員中の最年長議員が就任するものであり、議場外において臨時議長は存在しえない。そうなると、初議会が開会したときから執行機関が出席するに当たっては、開会前に出席要求をしなければならないが、開会前には臨時議長が存在しないため出席要求をすることができないという矛盾が生じる。
また②においては、議長選挙が執行機関における議会の審議に必要な説明に該当するかといえば、該当する余地がない。
そうなると先述のとおり法律上は、議長選挙において臨時議長は執行機関に対し、出席要求をすることはできず、またする必要もないということとなる。
執行機関自らの判断で議場に出席するということを認めると、議会の自律権を侵害することにもつながるので、初議会における議長選挙及び副議長選挙に執行機関が出席することは適当でないといえる。
選挙終了後にいったん休憩をして、新議長の下で、審議における必要な説明がある場合に、執行機関に対し出席要求をするのが適当である。