2023.03.27 政務活動費
第6回 政党が出版する政党紙の購入の是非
2 議員が所属する政党の出版物の場合
議員が所属する政党の出版物についても、東京高判平成28年12月21日や広島高岡山支判平成29年3月30日、岡山地判平成30年1月31日、大阪地判平成30年4月27日等において、その経費を政務活動費から全額支出することを認めている。
特に東京高判平成28年12月21日では、政党紙については、一般に発行元である政党の主義主張やそれに基づく活動について記載されるものといえ、発行元の政党を含む会派においてこれを購入及び購読することは、政党活動としての性質があることは否定できないが、県議会が、各政党を基本的な構成単位とする会派によって運営されるものであることに照らすと、政党の主義主張や活動内容を把握することは、県議会における会派としての意見や方針決定を検討するために必要なものであることから、政党機関紙の購読も、県政での活動に関係し、調査研究活動と合理的関連性又は必要性を有するものであるとし、その支出を認めている。
【東京高判平成28年12月21日】
いわゆる政党紙については、一般に発行元である政党の主義主張やそれに基づく活動について記載されるものといえるところ、発行元の政党を含む会派においてこれを購入及び購読することは、政党活動としての性質があることは否定できない。しかしながら、県議会が、各政党を基本的な構成単位とする会派によって運営されるものであることに照らすと、政党の主義主張や活動内容を把握することは、県議会における会派としての意見や方針決定を検討するために必要なものである。そうすると、政党機関紙の購読も、県政での活動に関係し、調査研究活動と合理的関連性又は必要性を有するものであるということができる。そして、上記1(3)イのとおり、政党活動としての性質があることを理由に一定の限度でしか政務調査費の充当を認めなければ、有益かつ必要な調査研究活動を阻害するおそれがあって妥当でないというべきである。したがって、政党紙(所属政党の機関紙を含む。)の購入費についても、政務調査費を充当することが違法であるとは断定することはできないというべきである。
※上記1(3)イ
議員の活動及びその前提となる調査研究活動が広範かつ多岐にわたるものであることに鑑みると、ある調査研究活動が県政に活用する目的以外には一切有用でないということは想定しにくく、他方で、県政に関する調査研究活動が、他の活動にも有用なものであるというのはままあることであると認められる。このような場合に、他の活動にも有用であることを理由として政務調査費としての支出を限定するとすれば、必要性の高い調査研究活動であるほどその費用を政務調査費として支出することが困難になるという不合理な事態を招くおそれがあって相当でないというべきである。そこで、本件マニュアルが、「活動に要した費用の全額を充当することが不適当な場合にあっては、各活動の実績に応じた按分により充当することとし」と規定し(本件マニュアルⅡ2)、按分による充当を行うべき場合を限定しているのも同様の趣旨に基づくものと解されるところである。このため、控訴人らが主張するように、県政に関する政務調査以外の目的又は効果がある場合には常に按分しなければならないとすれば、必要かつ有用な調査研究活動を阻害することになり、政務調査費制度の趣旨に反することにもなりかねない。したがって、調査研究活動が県政に直接関連する活動のみに限られ、県政に関する調査研究活動が他の活動にも役立つ場合には常に政務調査費としての支出を按分して行わなければならないとの被控訴人らの主張は採用できない。