2023.01.25 医療・福祉
第7回 介護保険の運用ローカルルール問題への対応
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員/杉並区地域包括支援センター管理者 本間清文
今回は、本間の論考のみの記載となります。
施行当初から継続する介護保険ローカルルール問題
以下は、2011年に介護保険におけるローカルルールの問題について筆者が拙著『介護の現場がこじれる理由』(雲母書房)に書いた一文です。
「介護保険制度は当初、地方分権の試金石などといわれ、地域にその裁量権を大きく委譲するようなムードもあった。しかし、それも雲散霧消してしまった。
ふたを開けてみれば厚労省からのいくつものルールでがんじがらめにされている。ローカルルールなどと称して、地域のために独自の解釈をしているのかと思えば、単なる法令・ルールの誤読や誤った運用であったりする場合もある。保険者自ら、介護保険制度をよりよくしていくために、都道府県や国に対して積極的に意見していくような姿勢は感じられない。それでも“ことなかれ主義”でもって自ら疑義を訴えることはない。」
「ローカルルール」とは、主に介護保険の保険者たる市町村が、その運営上、国が策定した法令に抵触しない範囲で独自のルールなどを定めるもので、ホームページなどに明文化されたものもあれば、全くオープンにされていないもの、はたまた、時の行政担当職員の解釈によるものなど様々です。
その結果、本来は「法の下での平等」のためにつくられた法や制度の運用が、時の行政担当者の解釈で異なっていたり、地域により異なる運用がなされ、介護保険サービス事業者や利用者が振り回される点が問題視されていました。
そして、前述の文書から10年以上が経過しましたが、ローカルルールの問題は大きくは改善していません。
以下は、2022年に内閣府「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」で挙げられたローカルルールに関する問題です。
◦介護保険制度の運営主体たる市町村が、介護事業者に対して、それぞれ独自のルール(いわゆるローカルルール)を求めることにより、介護事業者、特に、広域で事業を営む事業者の事務コスト増、ひいては国民負担の増大に繋がるとの指摘がある。
◦このような問題意識の下、当ワーキング・グループでは、介護制度のローカルルールに関し、これまで行政への提出書類の標準化等につき取り扱ってきたが、これらの取り組みについて、事業者からは、「一部負担軽減はされたものの、依然として負荷が大きい」「ルールは厚労省がしっかり決めて、その中で実効的な運用を考えるのが自治体の役割、という整理にすべきではないか」といった声があげられている(1)。