2022.10.11 医療・福祉
第6回 介護施設選びの制度的な課題
消費者保護が求められる施設の類型
こうした本来的に複雑すぎる施設類型を、分かりやすく説明することは不可能です。筆者の勤める地域包括支援センターにも施設入所の相談者が時々いらっしゃいますが、そのアドバイスには苦慮します。というのも都市部では、介護保険施設以外の施設は数が多すぎるし、そのサービスの質や内情も知る手立てがほとんどないため、地域包括支援センターでも施設探しへの具体的なアドバイスが難しいのです。
その結果として、利用者の施設選びは、高額な料金を支払うにもかかわらず、入居してみなければ、その実態は分からないという博打(ばくち)的な要素があることも否定できません。
こうした制度の未整備を背景に、都市部などでは老人ホームの紹介業者が多数存在します。
これら業者は、施設に入居者を紹介することにより、施設からキックバック(謝礼金)を得ることを業としているものです。しかし、その質も玉石混交で、4割以上の紹介事業者がクレームやトラブルを経験している実態(1)もあります。
2016年には、有料老人ホームをめぐり、利用者・消費者保護の観点から、総務省より厚生労働省などに対して勧告も出されています(2)。
しかし、現状は、まだまだ複雑怪奇な制度と施設類型という状況は改善されておらず、根本の問題は解決されているとはいえません。制度本位の施設編成ではなく、利用者に分かりやすい消費者目線での再編成が望まれます。
(1) PwCコンサルティング合同会社「高齢者向け住まい等の紹介の在り方に関する調査研究報告書(令和2年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分))」(2021年)(https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/track-record/assets/pdf/r2-s59-matching-services-for-elderly-residence.pdf)。
(2) 総務省「有料老人ホームの運営に関する行政評価・監視〈結果に基づく勧告〉」(2016年)(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/107317.html)。