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2022.09.26 コロナ対応

【研究会レポート】第26回 自治体法務合同研究会 三重WEB大会「新型コロナウイルス感染症と地方議会」

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2022年7月16日、第26回自治体法務合同研究会 三重WEB大会が開催された。
新型コロナウイルス感染症の影響を受けて3年ぶりに開催の運びとなった同研究会。オンラインでの開催となり、全体会は「新型コロナウイルス感染症と地方議会」をテーマに、会員以外も視聴できる形で行われた。ここでは、廣瀬克哉氏(法政大学)、榊原秀訓氏(南山大学)による全体会講演の様子をレポートする。

「新型コロナウイルス感染症と地方議会」

 はじめに、廣瀬克哉氏により「新型コロナウイルス感染症と地方議会」と題する講演が行われた。
 2020年1月に新型コロナウイルス感染症への国や自治体の対応がはじまってから、2年半が経過。地方議会においてもそのあり方が問われ、対応を迫られてきた。廣瀬氏はこの状況について、実際に目の前にある危機という現実性・切迫性がありながら、長期間にわたって一定の時間的な余裕をもって対応が続くという特殊な側面もあったことを指摘する。「今回の状況は、危機管理の視点から見れば、理念的・観点的に構想するのではなく、実際の、現実のものとして考えられるという、言ってみれば“好機”であったが、現在の状況を見渡すと、危機が長く続くことにより正常性バイアスがはたらき、危機管理の落とし穴に直面しているように感じる。たとえば、各自治体において、オンライン議会の具体化の検討はもう不要になったという雰囲気に陥っていないか、ふり返ってみてほしい。もし、2年半もの期間があったにもかかわらず危機管理策が前進していないとすれば、そのような組織で将来において危機管理ができる姿は想像し得ないのではないか。」と、警鐘を鳴らした。
 廣瀬氏は、非常時においても行政が機能を継続し、早期復旧できるようにするために、議会版BCP(The Business Continuity Plan;事業継続計画)について2つのポイントを掲げる。すなわち、緊急時の業務執行に忙殺されている執行機関に過剰な負荷をかけないこと、それと同時に本来果たされるべき議会によるチェック機能を確保することが重要であるという。
 非常時においては、個々の議員活動において得られた情報が整理されないまま伝わることで混乱が生じやすい。議員の非常時の役割についてあらかじめ整理しておき、「行政の足を引っ張らない」かつ「行政に丸投げしない」ことがポイントとなる。
 また、非常時においても議会の「会議」によるチェック機能を維持するため、オンライン会議の備えは今からしておくことが望ましい。操作などの習熟が必要な要素を確認するためにも、「少なくとも模擬開催を経験しておくべき」という。
 オンラインは対面の劣化した代替手段ではなく、オンラインだからこそ成立するコミュニケーションがある、との声もある。住民との新しいコミュニケーション手段ともなり得ることから、非常時に限らず、経常的な手段として活用していくことにより、議会機能の向上をはかれるのではないか、と期待を寄せた。
 最後に、「地方議会はリスク・コミュニケーションの場となり得たか」という問題提起がなされた。今回の新型コロナ禍においては、様々な判断に際して専門的な知見が必要とされたが、全く未知のウイルスであったことから、専門家から異なる意見が提示されることもあり、その状況下で住民の混乱を防ぐ必要も発生した。このような場面においては、それぞれの立場から異なる見解を突き合わせる「リスク・コミュニケーション」の場が重要であり、これからの議会にはこのような役割が求められるのかもしれない。

「新型コロナウイルス感染症と地方議会-東海三県の地方議会を中心に」

 つづく榊原秀訓氏による講演では、「新型コロナウイルス感染症と地方議会-東海三県の地方議会を中心に」と題し、統計資料などに基づき全国の状況にも触れながら、東海三県における2021年3月議会までの具体的な対応状況について紹介された(1)
 まず、地方議会の開催に関しては、開催自体をとりやめるのではなく、一定の制限や工夫をして開催が模索された。また、オンラインの活用のため会議規則等の改正、議会棟へのWi-Fi設置、議員への通信機器の配付が進められた。オンラインの活用について、榊原氏は「物理的な出席がないオンラインでの本格的な議論には限界がある、という感覚が存在するのでは」と懸念する。一方で、住民からの意見聴取について、「新型コロナ禍について市民と直接対話する機会があったか」という調査に対し、少数ではあるが、Zoomを利用して意見を聴いた自治体もあることが確認されたという。
 次に、2020年に行われた専決処分について、過去5年の平均件数と比較して多くなっていることを指摘。新型コロナ禍の影響によるものと考えられるが、通年議会の対応をとったり、臨時会を開催するなど、専決処分を避ける対応も考えられる。現状の専決処分の実態は、自治体によってかなりの相違があり、適切な専決処分のあり方についてはこれを機に議論が進むことが期待される。また、新型コロナウイルス感染症対策に関する条例の制定状況について、条例の内容の傾向と、パブリック・コメントの期間など制定過程の分析が紹介された。
 最後に、新型コロナウイルス感染症への対応については、前面に出た首長と比較して、地方議会の顔が見えないとの声もあったことを受けて、議会が地域や住民の実態を調査し、首長等に地域の実態に応じた措置を求めるべきとの見解も出ていることを踏まえ、基本原則に基づきながらも従来の活動を見直していくよい機会と捉え、議会の活動がより活性化していくことへの期待が述べられた。

 
(1)より詳細な内容については、本講演のもととなった論稿として、①「コロナ下の地方議会と条例」市橋克哉ほか『コロナ対応にみる法と民主主義』(自治体研究社、2022年)および②「新型コロナウイルス感染症下における地方議会の対応:東海三県における地方議会の対応調査のまとめ」南山法学45巻2号(2021年)187頁〜212頁を参照されたい。
 

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