2022.09.26 政務活動費
第5回 政務活動費におけるマニュアル等の法的有効性と具体的支出の適否について
2 会費等の支出の是非
政務活動費の支出に当たっては、議員としての議会活動を離れた活動に関する経費ないし当該行為の客観的な目的や性質に照らして議員の議会活動の基礎となる調査研究活動との間に合理的関連性が認められるかどうかを判断基準として支出することが求められる。ただし、地方議会の議員による調査活動は広範に及びうるものであり、議員が特定の団体に年会費等を支払ってその活動に参加することにより有意義な調査活動が行われる可能性は否定すべきものではないと考えられるため、会派又は議員として政務活動の一環として各種団体等に対する会費等の支出がどこまで可能であるかの問題がある。
そこで会費等の区分を、①団体に対する会費、②賛助金、③議員連盟の会費、に分けて考えてみる。
①団体に対する会費については、名古屋高判令和2年1月15日におけるように、その判断基準として、(ア)会費の支出目的が市政に関連するものかどうか、(イ)行政施策を遂行する上で有益なものであって議会の審議の充実強化に資するものかどうか、(ウ)会費の金額が社会通念上不相当に高額でないと認められるかどうか、の3点から判断することが適当であると考える。具体的に裁判において支出が認められた会費として、A駐屯地協力会年会費・B県防衛協会年会費・C市議会私立保育所保育推進議員連盟会費・D市建設OB会年会費・E市スケートボード協会年会費・F県釣り団体協議会年会費・日韓親善協会年会費等が挙げられる。ただし、マジシャンイーグルス年会費は個人としての趣味や趣向が強く、政務活動に関連した支出ではないと判断され、支出が認められていない。
なお、仙台高判平成29年4月21日においては、議員に就任する前に個人として加入していた団体の会費は、当該団体の設立目的と活動内容とともに判断する一つの基準とする必要があるとし、政務活動費からの会費に対する支出に厳しい判断を加えている。
【仙台高判平成29年4月21日】
個人の立場で加入している団体に対する会費を政務活動費で充当するに適さない経費と手引きで規定している場合に、議員に就任する以前から加入しているか就任以後から加入しているかも一つの判断材料とし、さらに会費対象団体の設立目的と活動内容から会費の支出を判断する必要がある。
②賛助金についての政務活動費からの支出は、そもそも議員の調査研究その他の活動に資する経費といえず、一種の寄附であることからも、名古屋高判平成27年4月15日で判示されたとおり支出が認められていない。
【名古屋高判平成27年4月15日】
日韓友好コンサート賛助金として30万円を支出しているところ、イベントを開催するために必要な寄附をすることは、通常議員の調査活動と関連性があるとはいえず、……調査活動に実質的な関連性があるとは認め難い。
③議員連盟の会費については、議員連盟の目的や活動内容を勘案すれば、地方公共団体の事務に関連するものであり、政務活動の目的に沿った支出であるといえ、当該経費への政務活動費からの支出が大阪高判平成27年7月30日や大阪高判平成30年3月27日でも認められる旨の判示がなされている。具体的には、高速自動車国道延長促進議連・県議会半島振興議連・第二阪和国道・京奈自動車道建設促進議連・県議会太平洋新国土軸建設促進議連・県議会農林水産振興議連・県議会スポーツ振興議連・県議会A党県議団福祉議連・県議会A党観光振興議連等が挙げられる。
ちなみに、NPOドットジェイピー会費について大阪高判平成27年7月30日で政務活動費からの支出が認められている一方、ライオンズクラブ会費は東京高判平成28年3月11日で、青年会議所年会費は東京地判平成28年3月22日でそれぞれ支出が認められていない(ただし青年会議所年会費については、大阪地判平成26年3月26日で支出が認められている)。