2022.07.25 医療・福祉
第5回 「小規模多機能」が普及しない理由と簡単な改善策
業者任せのパンフレット
そもそも、本来、都道府県が指定する訪問介護や通所介護よりも市町村自らが指定する地域密着型サービスの方が、市町村に指定責任もありますし、育てていく責務はあるはずです。にもかかわらず、住民向け資料といった最も市民にダイレクトにアクセスしていくものに、その視点が欠けているように思えてなりません。なぜ、そうなるのでしょうか。
これについては、筆者は、一時、市町村で働いた経験があるからいえることなのですが、そうした住民向けパンフレットを実質的に編集しているのは、市町村ではなく、パンフレットなどを作成する専門業者だからです。
これら市町村のパンフレットは、業者がひな型をつくっていて、市町村は人口や保険料といった細かい数字や文言をカスタマイズするだけで、でき上がるものなのです(市町村ですべて独自に作成しているところもあるでしょうが)。そして、それら「ひな型」のページ構成が、地域密着型サービスを地味に扱う仕様になっているのです。
ちなみに、そうした「ひな型」をつくる業者は地域密着の業者ではなく、全国の市町村に営業をかけ、幅広く応用の利くページ構成をつくります。その元ネタとなるのは、厚生労働省などがつくる公的な資料です。もちろん、厚生労働省は「国」ですから、介護サービスなどを示す際の序列は都道府県指定のサービス(つまり、訪問介護や通所介護など)が先に掲げられ、地域密着型サービスは後回しです。それを見本に資料を編集するため、(市町村にとっては大事なはずの)地域密着型サービスの扱いが地味で、小さいものになってしまうのだと思います。
業者のパンフレットの「ひな型」が、本当に市町村目線でつくられているか──そこを見直すだけでも、地域密着型サービスの普及度は違ってくるはずだと考えています。
(1) 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所「令和3年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分) 定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び(看護)小規模多機能型居宅介護の普及等に関する調査研究報告書」(令和4年3月)(https://www.nttdata-strategy.com/roken/report/index.html#r03_46)。