2022.07.25 医療・福祉
第5回 「小規模多機能」が普及しない理由と簡単な改善策
普及しない地域密着型サービス
小規模多機能型居宅介護(以下「小多機」という)については2006年度に、看護小規模多機能型居宅介護については2012年度に創設され、相当の年数がたちました。しかし、いまだに利用者があまり増えてない報告(1)が出されています。その報告書の中で、小多機については、参入事業者が少なく利用者が増えない主な理由として、「経営(報酬が低い等、収益・採算性)の難しさ」等が要因として挙げられています。また、「収支が安定しない・経営が難しい」ことの要因としては、「利用者や家族における認知度が不足している」の割合が54.6%で最多とされています。
そして、その対策として同報告書は「サービスの価値を可視化して分かりやすく伝えた実践事例を提示するといった周知についての検討が必要」などと述べています。
相談窓口から見た地域密着型サービス
これについて、地域包括支援センターの窓口で介護の相談を受けている身としては、疑問に感じることがあります。
それは、なぜ、市町村の介護保険の住民向け資料は、地域密着型サービスが後ろの方に目立たないようにしか記載されていないのか、ということです。
例えば、「介護保険、ガイドブック、パンフレット」等で検索すると、多くの自治体が住民向けに発行している冊子のデータがヒットします。それらの中身を見ると、多くが似たようなページ構成で、似たような内容です。特に注目していただきたいのは、介護サービスの書かれ方です。必ずといっていいほど、総合事業や居宅介護支援(=在宅ケアマネジメント)や訪問介護(ホームヘルプ)が最初の方に、比較的ボリュームを割かれているはずです。そして、小多機などの地域密着型サービスは最後の方に、「付け合わせ」程度に掲載されていることが大半です。要支援といった軽度認定者でも小多機などは利用できるのに、すべての軽度認定者を総合事業へ誘うようなページ構成になっています。
そうした冊子を高齢者の相談窓口や役所の窓口では、住民に手渡し、介護サービスの説明をするわけですから、住民の脳裏に地域密着型サービスなどが入っていくのは難しいはずです。
この構成を変えて、地域密着型サービスをもっと目立つ位置に持ってくるだけでも、住民の受け止め方は大きく変わってくるでしょう(窓口職員たる地域包括支援センターなどの意識も変わってくるはずです)。