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2022.05.13 一般質問

第14回 一般質問を議会の政策資源に ③別海町議会「一般質問検討会議」が示唆すること【後編】

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政策議会の一般質問・質疑と自治体

 別海町議会では、2021年に制定した議会基本条例の中で「政策議会」を目指すとしているが、一般質問検討会議の制度化とともに、一般質問と委員会活動の実践により具体化して議会としての「町政への監査・提案」に取り組んでいるといっていい。
 ただ、「政策議会を目指す」という方向性、また、追認機構から自治体政策主体として自立した「政策議会」というあり方への理解は、すぐに円滑に得られるわけではないようだ。
 西原浩議長によれば、一般質問での実質的な委員会代表質問の取組みは、委員会には出席しない理事者の政策方針や町としての見解を「問い質(ただ)す」ためのものであったが、そうした違いが意識され答弁に反映されているとは必ずしもいえないことがあるという。また、予算と決算の連動を調査しようと通年で予算決算委員会を設置したが、その趣旨も十分な理解を得ていないのではないかとする。ここからは筆者の見解で、一般論となるが、一般質問や意見書など、自治体政策への積極的なチェックや提案が、自治体行政にとっては、行政や首長それ自身への「反対」「否定」と感じられてしまうことがある。議会の「姿」について過去の経験を積み重ねて形づくられた認識や感覚が、追認機構としてのそれであれば、「政策議会」のあり方や活動には違和感を持たれるであろうことは理解できる。
 おそらくそうした、「従来の議会の姿」と「政策議会としての姿」の認識や感覚の違いは、議員にもあると考えることが自然である。別海町議会での検討会議の取組みを当初から間近に見ることになった筆者も、回数を重ねれば必ず成果が実感されると考えていたが、その前に、忙しいタイミングで半日ほど時間をかけて、それまでしたことのない「自分の一般質問の中身で意見交換する」という取組みを継続することは簡単ではないのではと感じていた。西原議長によれば、従前は、一般質問に立つより、議長や委員長を経験した職責の制約もあって、調整や一般質問ではないアプローチで力を発揮するのがベテラン議員像であったともいう。
 こうした認識を踏まえて改めてアンケートの回答を見ると、「政策議会」の変化の変わり目にある議会の試行と模索の成果が改めて確認できる。
 もちろん、こうした制度を「回す」ことで一般質問の「質」が自動的に向上するとは限らない。課題がないわけではなく、自由意見欄では検討会議の意義に触れつつ、「いわれたことをどう生かすか」が課題である、「良くも悪くも慣れて」きている、といった声もある。また、Q4で、具体的に変化を感じた項目の中で「1. 質問のための調査で、データや現地調査などの情報収集をより充実させるようになった」5件(33%)は、低いわけではないが、町民や行政職員、関係者の声とともに、一般質問の根拠をより強固にするものであることを考えれば、重要な点であることは間違いない。ただ、委員会活動や議員活動の中で「議員ひとり」の調査力やそのための時間などにいずれは限界もある。もし「政策議会」としての活動の質量を高めていくとすれば、いずれ、調査力の強化が、議会として課題になることがあるだろう。
 向上の余地は常にあり続けるが、それはこれまでの取組みの効果や価値を否定するものでは全くない。別海町の一般質問検討会議が、一般質問を通じて政策課題を議員間また委員会で共有し、一般質問検討会議という議員の提起を議論する場となっていること、それは「政策を議論する議会」の実践を積み重ねる制度化であり、短期にも長期にも「政策議会」を目指す議会に大きな影響を与えることと考えられる。
 「政策議会」としての実績を成果として積み重ねていくことこそが、議会に対する町民の関心を惹起(じゃっき)し、従来の議会像を変えていく力になるのではないだろうか。現状の中で奮闘される議長はじめ議員各位の活動、それを支える事務局の取組みに敬意を評したい。
 議会での議員間の自由討議に悩む議会は少なくない。本連載でも提起してきたように、議論が盛り上がるかどうかは、「争点×機会」、つまり「話し合いたいネタ」と「話し合うことに意味があるタイミング」かどうかであり、さらにその「盛り上がり」が成果になるためには、参加者の意思を統合する過程が必要である。議員にとって、話し合おうと発意できるのは、何より「我がまちの課題」=政策課題と、そしてそれを扱う「議会のあり方とその運営」=議会自治であろう。「争点×機会」、その意思統合が制度化されることで、議員の自由討議が議会の意思となり自治体政策を〈制御〉することになる。一般質問検討会議の制度化は、その意味で先駆といえるだろう。
 本調査の実施、また本稿での公開に当たっては、別海町議会の協力をいただいている。西原浩議長をはじめとする別海町議会議員の各位、議会事務局の局長・千場富夫氏、ことに回収にご助力くださった入田浩明氏に感謝申し上げたい。また、一般質問検討会議の実現と模索に関しては、前議会事務局長・小島実氏、前主幹・松本博史氏のご尽力が大きく、同じく別海町の議会サポーターであり北海道自治体学会議会技術研究会共同代表・西科純氏のご功績も大きい。取組みの蓄積に、心から感謝申し上げたい。

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