2022.05.13 一般質問
第14回 一般質問を議会の政策資源に ③別海町議会「一般質問検討会議」が示唆すること【後編】
別海町議会・西原浩議長の声を踏まえて
この取組みを議長として進めてきた西原浩氏は、一般質問検討会議を実施することになった背景に、議会活動に対する町民の関心が薄れているのではと感じていたことを挙げる。学校の統廃合、あるいは道路の舗装率の上昇など、政治が介在する生活実感ある「ミクロの視点での課題」が減少したことが影響しているのではないか、ととらえつつ、しかし、「少子化、高齢化が進む社会で、マクロな視点での政治活動が地域の活力に影響する」と考え、そこに議会が力点を置くことが重要と説く。
一般質問をめぐる現実の状況には、自治体政策の立案はほとんど行政側で担われ執行されていて、かつ「行政は間違っていない」前提が働き、さらに、厳しい経済環境もあって政策資源を新しく配分することには消極的になる。そのため、西原議長は、一般質問での問題提起や提案に対して、「やり過ごす答弁になることが多い」ことを挙げつつ、それでも一般質問が自治体政策への提案として成果をもたらすことがあるとし、その一例として、2018年9月6日の北海道胆振東部地震の後、一般質問で防災対応に関する質問が多く出たことで、その後の防災無線整備事業を後押しすることになったことを挙げる。
検討会議の効果については、実感されていることがグラフでも読み取れ、加えて、自由意見欄でも「レベルの底上げ」や「検討会議を生かす」ことが重要として言及しているものがあるが、西原議長からは、以下の点を挙げて評価される。複数の議員からのアドバイスやサポートの効果があり、(現在の検討会議では質問する議員自身でその質問についてプレゼンテーションすることになっていることで)事前に質問の流れを練習する機会にもなっており、定例化して「システム化することにより、個人の着眼点からスタートした質問が、複数の議員により補完され、精度の高い質問となる」。
委員会との連携では、議員の一般質問を、事前に委員会で調整し合意した内容で「◯◯常任委員会の委員の総意により行う」と冒頭に明言して、事実上の委員会代表質問がなされているが、このように、委員会→一般質問という連携と、一般質問で提起した課題が委員会の調査テーマになる、一般質問→委員会という連携の二方向が実践されている。
前者については次の項目で触れることとし、まず後者について見ておこう。一般質問から委員会の調査事項になった項目としては、病児・病後児保育(2020年3月定例会一般質問で2022年事業開始を目指す旨の答弁→第2期子ども・子育て支援事業計画策定に当たり立案段階から委員会に詳細な資料を示し、病児・病後児保育を委員会で検討することを確認→2021年3月定例会で一般質問)、学校給食アレルギー除去対応問題(2020年12月定例会一般質問、2021年9月定例会一般質問)などがある。
また、検討会議が直接の要因となったというわけではないが、第2期別海町議会活性化計画の中で「委員会の調査力及び政策力の向上」を掲げたことから、委員会調査そのものも活発になっている。予算決算特別委員会を通年で設置したり、2020年から2021年にかけては議会基本条例策定のための特別委員会を置くなど、常任委員会と特別委員会がともに積極的に動いている。提言書の可決も続くが、特に2021年に放射性廃棄物処理施設の文献調査受け入れをめぐる町長発言についての提言書では、発言からとりまとめまで短期間で進められている。こうした一般質問や委員会の積み重ねが、議員の間での一般質問と自覚的に質疑を使い分ける意識にもつながっているという。