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2022.04.25 医療・福祉

第4回 ケアプランの有料化がはらむ問題点

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ケアマネジャーという裏方業務の見えづらさ    

 以上のような、判断力が低下している老人には、実際に支援をしてくれるホームヘルパーという存在は、仕事内容も目に見えて分かりやすいのですが、ケアマネジャーの役割を分かる老人はあまりいません。ケアマネジャーの仕事は裏方的な業務ゆえ、老人の目には何をしているか分かりづらいのです。  
 ケアマネジャーとホームヘルパーの関係は、いうなれば、建築家と工務店の大工のような関係といえるかもしれません。建築家に設計を依頼し、施工を工務店に頼んだ場合、工務店から大工さんが派遣されるパターンが多いと思います。ケアマネジャーもケアプラン(介護サービス計画)をつくったら、それを介護サービス事業者に交付して、そこからヘルパーが派遣されたり、デイサービスの車が迎えにきます。  
 しかし、理解力が低下した老人には、そういう複雑な仕組みを理解することは困難です。 ホームヘルパーは掃除や入浴の手伝いなど目に見える支援をしてくれるので、分かりやすいのですが、ケアマネジャーは何をする人なのか見えにくい。ケアプランをケアマネジャーが一生懸命つくっても、目が悪かったり、内容も理解できないことが多いのです。  
 それでも、現行制度では、ケアマネジャーに対する料金(以下「ケアマネジメント費」といいます)は、(全額、保険給付のため)原則、無料です。だからこそ、本ケースのような場合でも、何とかケアマネジャーが介入できる余地があるのです。

ケアマネジメント費を徴収することの問題点  

 しかし、現在、厚生労働省における介護保険制度の見直しに関する会議では、ケアマネジャーの利用料金を徴収する案が検討されています。議論の発端は、経済界や財務省が給付費の抑制の観点から言及し始めたことでした。  
 彼らの論旨は、現在のケアマネジメント費が無料ゆえに、利用者サイドからのチェック機能が不十分だが、有償化することでチェック機能が働くようになり、おのずとケアプランの質の向上、ひいては不要なサービスの削減などにつながるのではないか、というものだったと思います。そのため、厚生労働省としても会議の俎上(そじょう)に載せざるをえなくなったといえるでしょう。  
 しかし、本ケースのトメさんのように、第三者は「サービスを使うべき」だと思っているのに、本人は「サービスなんか使いたくない」というような場合もよくあります。そこに、ケアマネジメント費が発生するとどうなるでしょうか。「アタシャ、サービスなんて使いたくもないのに、何でケアマネジャーなどという訳の分からん人にまで、お金を払わないといけないんじゃ?!」となることは必至です。  
 そのようなわけで、一律にすべての利用者からケアマネジメント費を徴収することは反対です。もちろん、中には利用料を徴収することでメリットがあるケースもあるでしょう。しかし、トメさんのようにデメリットが上回るケースもあるし、その中間のケースもあります。  
 そもそも、現在のケアマネジメント費の費用額がどういう経緯で設定されたのかも国の資料などでは明らかにされていません。診療報酬のような技術料などの観点における介護報酬の設定なども、もっと比較し、議論されてもいいはずです。そうしたきめ細やかで丁寧な議論や科学的なデータを背景にした議論を経て問題を論じなければ、本当の意味でのケアマネジメントの質の向上はありえないのではないかと思います。

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