2022.04.11 住民参加
【イベントレポート】市民と議員の条例づくり交流会議2022【春のオンライン】
コロナ禍2年間の各地の取組み
事例報告では「コロナ禍2年にどう向き合い、どのように取り組んできたのか」として、現場の議員4人による話題提供が行われました。
はじめに、静岡県裾野市議会議員の内藤法子氏より「コロナ禍・財政非常事態宣言・市民とのオンラインでの意見交換会」という報告がありました。裾野市では2021年2月より「財政非常事態宣言」を発出しており、この財政危機の中で、収支均衡に向けた取組みとして公共施設等のあり方の見直しが大切なテーマと考え、市が公表した「公共施設等総合管理計画(案)」をもとに、オンラインを利用した意見交換会を行うことで市民と公共施設の問題を共有した、という話がありました。参加者からは、「今後も市民が参加できる多様な方法をできるだけ用意してもらえると助かる」、「気軽な気持ちで参加できる」などといった感想があり、内藤氏は「今回の経験は非常に手応えがあり、積極的な展開でこれからも続けていきたい。討論の広場として有効な活用の候補になったと思う。議会報告会が形骸化していつも同じ顔ぶれで人数が少なくなっていくという壁にぶつかっていた中で、SNSを通じて新しい人たちとじっくり話して、じっくり説明できたことは、大きな成果だったと思う」と締めくくりました。
続いて、愛知県知立市議会議員の田中健氏より「オンラインを活用した市民との対話・報告会、市民との合同研修会」という報告がありました。知立市議会では「習うより慣れよ」を合言葉にICT化・オンライン化に取り組んでおり2021年5月の第35回議会報告会では、議員は議事堂委員会室に参集し市民はオンラインで参加する「ハイブリッド方式」を採用して初めて市民とオンラインでつないで開催。その後も音声がよく聞こえるような機材を導入したり、オンライン意見交換会のツールとして「Padlet」というアプリを使用したり、オンライン視察・オンライン研修の実施などを通して、「新たな市民の参加や、非接触・非対面での交流が実現でき、新たな住民参画の形と確信した」と述べました。また制度面では、2020年4月30日の総務省自治行政局行政課長の「技術的な助言」を受けて、委員会条例の改正やオンライン委員会運営要綱の整備に取り組んだこと、「知立市議会DX推進プロジェクト」を発足したことを挙げ、運用や利便性の向上については実際に使う議員が主導で検討するようにしたこと、DXに精通した議員とそうでない議員のハイブリッド構成にすることで考えの偏りを防ぎ、分からないこと、不便・不安なことを把握しながらチーム議会でDXを推進していくことで、「議員内でも会派をこえて相談できる環境をつくることができた」と締めくくりました。
次に、東京都東村山市議会議員の佐藤まさたか氏より「議会報告会をやめない/動画配信からオンラインでの対話と議論の場づくりへ」という報告がありました。東村山市では2020年5月、新型コロナウイルス感染症の影響で議会報告会が初の中止となったことで、報告部分だけでも継続するために職員や議員の私物である機材を持ち寄って録画配信を試みたこと、ソフト面・ハード面とすべてが手づくりの中、試行錯誤を重ね、そのうち参加者と双方向でやり取りができるようにZoomを活用したオンライン開催に挑戦した経験を語りました。「最初の頃は双方向で行っているとは言い難い状況であったが、質疑応答の仕方(オープンチャットの使用や顔を出して発言など)、ブレイクアウトルームを活用した意見交換会などの工夫を行うことで、参加者から満足度の高い反応をいただけた」と述べました。最後に今後の課題として、「オンラインゆえに参加できない人への対応策を考えるとともに、設備費用の予算化、技術的なサポートの検討、駅頭宣伝などの機会が減ったことで議員間のコミュニケーションが減っているので、それを意識して補うことを考えている」と締めくくりました。
最後に、兵庫県宝塚市議会議員の寺本さなえ氏より「いち早く議会報告会オンライン化/新たなコミュニケーションをつくっていく」の報告がありました。緊急事態宣言の発出後、オンラインで議会報告会を開催するのはどうかという議員からの声で試みが始まり、当初はミーティングツールの選定、受付方法など課題が山積していたが、1期生の議員にオンラインツール等に詳しい人がいたことをきっかけに、スムーズな運営を行うためルールの設定や役割分担などを細かく決めたことを解説しました。また宝塚市議会では、ここ数年、議会報告会への参加者の減少、常連化、高齢化が課題となっていたが、オンライン議会報告会を開催することで参加者の顔ぶれが一新したことを実感し、その後も報告内容と資料を市議会ホームページで公開したり、YouTubeでの動画配信を始めたりと活動を広げ、「どんなときでも市民との対話を止めない姿勢、一歩ずつでも進化させようという機運が大事であり、議員と職員のスキルアップにつながった」と述べました。当面のチャレンジ目標として、「オンライン議会報告会のアーカイブ化や双方向でのオンライン議会報告会・オンライン意見交換会の開催、リアル+オンラインのハイブリッドな議会報告会、またYouTubeの活用などといったより多くの市民に見てもらうため環境の整備を推し進めていきたい」と締めくくりました。
四つの事例発表を受けて、廣瀬氏からは「やってみた議会・実践している議員の間には共通の認識、感覚的な共有ができており、実践できていないところとの差ができ始めていると感じた。実践できていないところは、後発者の利得として、ぜひ先行者の経験を生かしてほしい。新しいツールが社会に普及している今、その環境変化をうまく活用して市民と議会のコミュニケーションをより厚くしてほしいと思う。そのように活用してもらうことで、この2年間という期間は、様々な制約はあったがプラスの面も獲得したなと実感できるのではないか」と参加者へ投げかけられました。