2022.03.25 政務活動費
第3回 政務活動費による広報費の支出③
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
(※第2回からの続き)
8 後援会名での広報紙・誌の発行に係る経費を政務活動費から支出することの是非
政務活動費の支出が許される広報費は、議員の調査研究その他の活動に資するものであり、政務活動費の交付に関する条例に規定されたとおり、「会派(議員)が行う活動、市(区)政について住民に報告するために要する経費」である必要がある。
そうすると、議員が行う後援会に関する活動に係る経費は、政務活動に含まれない活動であるといえ、その支出は原則として認められない。
ここで問題となるのは、後援会の広報・広聴活動の一つである後援会名での広報紙・誌(以下、単に「広報紙・誌」という)の発行に係る経費を政務活動費から支出することができるかどうかである。
確かに広報紙・誌の発行は後援会活動の一環であり、その内容いかんにかかわらず当該政務活動費からの支出を一切認めないとすることも考えられる。
しかし、次に掲げる宇都宮地判平成28年3月17日及び東京高判平成28年9月27日のとおり、議員のホームページの表題又は広報紙・誌の発行者が議員の後援会名であったとしても、そのホームページ又は広報紙・誌の内容により政務活動費からの一定の支出が認められる場合があるといえる。
すなわち、①議員後援会名のホームページに、議員が市民と触れ合う写真や、自身の選挙結果の報告、後援会に関する情報が記載されており、これらの記載は単なる議員個人の宣伝や選挙活動、後援会活動として、政務活動費を充当することは許されない広報活動に該当するが、同ホームページのうちその他の項目は、会派が行う議会活動や県政に関する政策等を広く住民に知らせ、地方議員として住民から意見を聴取、収集するための前提知識等を提供するものということができ、後援会会員以外の住民のために有益な情報も含まれていることから一定割合の支出を認めることが可能であること、②広報紙・誌の発行者が後援会名になっていても、発行者の名義いかんにかかわらず、広報紙・誌の内容が、会派が行う議会活動及び県政に関する政策等を住民に知らせるために必要な広報活動である以上は政務活動費の充当も許されるというべきであるといえ、当該広報紙・誌に対し政務活動費からの一定割合の支出を認めることは可能であるとされている。
結局、広報紙・誌については、会派の行う議会活動又は県政に関する政策等の報告の部分を、議員個人の宣伝等の部分から客観的、論理的に分離することができないといった体裁、内容のものでない限り、広報紙・誌を読む住民は、議員個人の宣伝等と一応切り離した上、会派又は議員の議会活動又は県政に関する政策等の報告の部分を閲読し、会派の活動や県政の現状、問題点等を理解し、それを踏まえて一定の意見を形成し得るものということができるとしている。したがって、議員個人等が発行名義人となる広報紙・誌の紙面上に、会派の議会活動又は県政に関する政策等の報告のほか、当該議員個人の宣伝的な側面等が混在しているからといって、政務活動費を一切使用することができないとすることは相当ではなく、それぞれの部分が全体に占める割合及び読者に与える印象の程度に応じ、按分して政務活動費の使用を認めることが相当だとしている。