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2022.01.28 医療・福祉

第3回 「科学的介護」は介護の生産性を上げられるか?

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馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない——介護現場の実情  

 また、「介護」とは、言い方を換えれば「人と人との共生」です。若しくは協力や支援を得ながら生活をする「協生」(筆者造語)といってもいいかもしれません。理屈ではないところで物事の判断や行為が行われたり、行われなかったりします。  
 その証左として、病院では素直に専門家の指示に従っていた老人が、家に帰ると急にわがままになり、専門家の意見に耳を貸さなくなることも珍しくありません。  
 また、病院では穏やかな人格だった老人が、家に帰り、妻や息子の妻(「嫁」)といった自分のわがままの利く家族に囲まれると横柄になったり、傍若無人になることもよくあります。管理栄養士が「栄養が足りていないので、もっと肉、野菜をとるようにしてください」といっても、同居している家族がそれに従わないこともあります。感情で物事が動いたり、動かなったりすることは当たり前なのです。  
 このように介護、とりわけ自宅に近い環境で行われている介護は、とかく不安定な条件が多く、すべてにおいて不確実性が高いのが実情です。そうした現実を踏まえることなく、客観的なアドバイスを送るのが科学的介護によるフィードバックです。それは、現場の介護職やケアマネジャーにいわせれば、「机上論」の一言で片付けられてしまいます。
 「馬を水辺に連れていくことはできても、水を飲ませることはできない」という外国のことわざがありますが、私はそれを思い出します。「Aさんには、〇〇が必要です」と正論をいうのは簡単ですし、おそらく、それは現場でもうすうす感づいていることです。でも、それができない他の要因があり、困っているのが介護の現場なのです。  
 つい先日も、軽度認知症で一人暮らしのAさんの歯科通院に少しだけ付き合いましたが、その際に、歯科医院から「次回は〇月〇日の〇時に受診してください」といわれました。しかし、Aさんは軽度認知症で、日にちも時間も覚えられません。それに対して、「ケアマネジャーに頼めばいい」、「ヘルパーを使えばいい」などともっともらしいアドバイスをする人もいます。しかし、現在の介護保険は制度上、①軽度の認知症の方の、②単発の歯科への通院同行を、③ヘルパーの支援によってすること、は非常に難しい現実があるのです(その理由を書くと長くなるので割愛します)。  
 そのようなわけで、私は科学的介護が膨大なコストをかけ、机上論だけを振り回さないかと気をもんでいます。そうならないためにも、議員の皆様には、科学的介護の進捗状況や結果を注視し、現場の介護がよりよいものとなるよう働きかけていただければと思います。
(1) 公益社団法人全国老人福祉施設協議会「科学的介護情報システム(LIFE)導入状況調査(令和3年度)」(2021年)(https://www.roushikyo.or.jp/?p=we-page-menu-1-3&category=19377&key=22042&type=contents&subkey=391504)。

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