2021.11.10 政務活動費
政務活動費を不正受給して辞職したベテラン県議
今回の事件をきっかけに、山形県議会では政務活動費の厳正利用に関し議論と改善が進むものと期待されますが、参考となるのは、「号泣県議」で話題になった兵庫県議会の改革ではないかと思われます。これについては拙著『自治体議員入門』でも解説しましたが、改革のポイントの一つは、条例を改正して政務活動費の交付対象を議員個人ではなく会派にすることです。
山形県の「政務活動費の交付に関する条例」では、交付対象が「会派(一人会派を含む)及び議員」とされ、交付額は、「会派3万円/月(会派所属議員1人当たり)、議員28万円/月」となっています。月81万3千円の議員報酬とは別に、議員1人当たり月31万円の政務活動費が交付されています。
兵庫県議会は、野々村県議の不適切支出が発覚したことを受けて、2014年9月定例会において、政務活動費の交付に関する条例における「県は、会派及び議員に対し、政務活動費を交付する」という規定を「県は、会派に対し、政務活動費を交付する」と修正し、議員にも直接交付する従来のあり方を変えました。政務活動費の交付対象を会派のみとし、議員に対する政務活動費は、会派から精算払で交付することとしたのです。これは、政務活動費の使用に関し会派所属の議員の指揮監督を会派の責務とする主旨です。条例では「会派は、政務活動費の適正な使用を確保するため、その使用について当該会派に所属する議員を指導監督しなければならない」としました。
そして、「議長の責務」を新設し、「議長は、政務活動費制度の適正な運用を期するとともに、その使途の透明性の確保に努めるものとする」としました。議長は、収支報告書に関し、政務活動費の適正な使用を確保するため必要に応じてその内容の調査を行い、調査の結果、必要があると認めるときは、会派に対し収支報告書の内容の是正を勧告することができ、勧告を受けた会派が、正当な理由なく当該勧告に応じない場合には、議長は、当該会派に対し相当の期間を定めて収支報告書の内容の是正を命ずることができることとしています。これと同時に、議会事務局の体制を整備しました。
従来、政務活動費の事務は、議会事務局の総務課経理班が他の事務と同時に処理していましたが、政務活動費の収支報告書のチェックなどを行う専任部署として「審査室」を新設しました。審査室には政務活動費の審査に関することを担当する審査班と政務活動費の企画調査に関することを担当する企画調査班が置かれることになりました。これは議長が新たに負うことになった責務の遂行を補佐する体制を強化するためでした。