2021.10.11 選挙
政党の二連のぼりを選挙運動期間前に街頭に掲示したり選挙期間中も掲示したままにすることができるか/実務と理論
3 検討のポイント
法における「立札及び看板『の類』」とは、懸垂幕、プラカード、横断幕等をいうもので、のぼりについてもその中に含まれると解されており、のぼりは立札・看板の類に対する法上の規制を受けることとなる。
したがって、公職の候補者等の政治活動のために使用される公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示するのぼり(以下「個人用のぼり」という)は、法143条16項1号に規定するもののほかは掲示できず、数や掲示場所、大きさの制限を受けることとなるほか、証票を貼ることも必要である。
一方で、公職の候補者等の氏名又は当該公職の候補者等の氏名が類推されるような事項を表示するのぼりであっても、政党の政治活動のために使用されるもの(以下「政党用のぼり」という)である限り、法143条16項の規制を受けるものではない。このようなのぼりは、いわゆる二連ポスターと同様、演説会告知のために使用され、その弁士として公職の候補者等の氏名を表示していることが多いであろう。
のぼりが個人用のぼりであるか政党用のぼりであるかは二者択一的に判断されるものではなく、政党が使用するものであっても、その態様により、個人用のぼりとしても使用されていると認められることがあり得る。
この認定については、個別具体の事例に即して行わざるを得ないが、一般的な外形判断として、次の場合には、個人用のぼりとしても使用されていると考えて差し支えないであろう。
① 当該のぼりで紹介された弁士が1人である場合(党首である場合を除く)
② 複数の弁士が紹介されている場合であっても、弁士のうち特定の者のみ殊更目立たせるなど他と異なる特段の扱いとしている場合(殊更目立たせている者が党首である場合を除く)
③ 複数の弁士を同様に取り扱っている場合であっても、弁士である公職の候補者等(党首を除く)の紹介に係る記載部分の面積が、各々について、弁士等の個人紹介に係る部分を除いた純然たる政党の記載部分の面積を超えている場合
④ 当該のぼりで弁士として紹介された個人の全てが、同一選挙の同一選挙区(一方の選挙区が他方の選挙区を包含する場合を含む)の公職の候補者等(党首を除く)である場合
また、政治活動用として公示又は告示の日前に適法に掲示されたのぼりについては、(法201条の14の規定による撤去義務があるポスターと異なり)記載された者が候補者となった場合であっても、公示又は告示の日前に撤去が求められるわけではない。
ただし、数多く掲示されている場合や告示日間際に掲示された場合など、掲示の時期、場所、数量等の態様によっては法147条5号(選挙運動の期間又は期間前に掲示した、公職の候補者の氏名や政党その他の政治団体の名称等を表示する文書図画)の規定に該当することもあり、この場合、都道府県又は市町村の選挙管理委員会は撤去させることができるものである(このような場合には、掲示した時点で法129条に抵触するおそれがあるともいえる)。