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2021.09.10 コンプライアンス

第27回 兼職・兼業の落とし穴(後編)

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解説

解説1 兼職・兼業先の法人や団体等について問題となりえる場合について
 1 寄附(法199条の3、199条の4)
 2 買収罪・選挙の自由妨害罪等(法221条、法225条)
 3 文書図画の頒布(法142条)
 4 文書図画の掲示(法143条)
解説2 設問の検討

解説1 兼職・兼業先の法人や団体等について問題となりえる場合について
 兼職・兼業先が会社や法人、任意団体など別個の活動主体である場合、当該活動主体の行為につき法の規制が及ぶことになります。さらに、法人や団体そのもののほか、その代表者や指示命令等を行った者についても、それぞれの行為について規制の対象となりえます。
 そこで今回は、兼職・兼業先の法人や団体等が活動するに当たって問題となりえる場合について考えてみます。
 なお、公職者や公職の候補者又は公職の候補者になろうとする者(以下「公職者等」といいます)が個人事業主の場合も、以下の(1)を除いて同様に考えることができます。

1 寄附(法199条の3、199条の4)
(1)公職者等の関係会社等の寄附の禁止(法199条の3)
 公職者等が役職員や構成員である会社・団体については、公職者等の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような方法での選挙区又は選挙区域内(以下「選挙区内」といいます)の者に対する寄附が禁止されます。公職者等がいわゆる肩書きのない構成員や従業員であっても適用されます。
 「氏名が表示され又はその氏名が類推されるような方法」としては、公職者等の氏名(氏のみも含む)が法人名である場合の当該法人名や、「○○株式会社代表取締役《公職者等》」といった形式での名義などでの寄附が典型です。さらに、例えば「山田勝雄」氏が普段「やまかつ」の愛称で知られ一般に浸透している場合には、「やまかつ」名義での寄附も氏名が類推される方法となる可能性があります。
 なお、例外として、政党その他の政治団体又はその支部に対する寄附は可能です。

(2)公職者等の氏名等を冠した会社・団体の寄附の禁止(法199条の4)
 公職者等の氏名が表示され又はその氏名が類推されるような名称が表示されている会社や団体が、その公職者等の選挙に関し、公職者等の選挙区内にある者に対して寄附をすることはできません(法199条の4)。
 なお、これについても例外があり、政党その他の政治団体若しくはその支部又は公職者等に対しては寄附ができることになっていますが、会社・団体については後述(3)の規制があります。

(3)法人の公職者等に対する寄附禁止(政治資金規正法21条)
 兼職・兼業先において、何らかの形で公職者等を支援したい・支援しようといったことは多いかと思われます。
 しかし、政治資金規正法では、政治団体以外の会社・団体が政党及び政治資金団体以外の者に対し政治活動に関する寄附をすることを禁じています。
 そのため、政治団体以外の会社・団体が公職者等に対し、政治活動・選挙運動に関して金銭や物品を供与したり財産上の利益を与える援助をすることはできません(報酬や給与は職務や労働に対する対価であるため寄附には当たりません。ただし、報酬や給与の名目で過大な金銭を支払った場合は、相当な部分を超えた分は寄附になると考えられます)。

2 買収罪・選挙の自由妨害罪等(法221条、法225条)
 公職者等が関係する法人・団体においては、当該公職者等との関係性や影響力が一般の場合に比べて大きいため、当該公職者等への投票や選挙運動への協力を求められることが多くなります。それゆえ、知らず知らずのうちに買収をしてしまったり、圧力をかけてしまう危険性があります。

(1)買収罪等(法221条1項1号~3号)
 買収罪等の要件は、前回解説した公職者等が行う場合と同じです。法人や団体等が主体的に行う場合は、公職者等への投票や選挙運動への協力などを求め、その見返りに臨時ボーナスや休暇にもかかわらず給与を支給するといった経済面での利益、昇進・希望部署への異動や子女の就職あっせんなどの人事面での利害誘導などが考えられます。

(2)選挙の自由妨害罪(法225条)
 選挙の自由妨害罪についても、要件は前回解説した公職者等が行う場合と同じです。行為としては買収罪等の場合とは逆に、経済面や人事面で不利益(昇給や給与査定、配置や人事での不利益取扱い等)をもって投票や選挙運動に関する意思決定を阻害するといったことが考えられます。

(3)処罰対象者
 上記の買収罪及び選挙の自由妨害罪については、法人処罰規定がありません。実際に処罰されるのは、買収や選挙の自由妨害行為をした個人となります。会社や団体の方針として決定・実行した場合は、その決定に関わった者も罰せられることになると考えられます。

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