2021.08.25 一般質問
第13回 一般質問を議会の政策資源に ③別海町議会「一般質問検討会議」が示唆すること【前編】
議会モニターからの指摘と第2期議会活性化計画での研修実施
別海町議会は、議会としてかねてから一般質問に熱心な取組みを展開してきたというわけではなかった。むしろ、問題として指摘されていた。
別海町議会では2016年5月から2019年4月を計画期間とする「第1期議会活性化計画」を策定し、併せて2016年からモニター制度が導入され、計画の検証にあたっても「議会モニター意見交換会」が開催された。計画そのものでは一般質問についての項目はなかったが、モニター意見交換会では計画の基本方針4の「町民本位の政策立案と提言」で、また総合評価として「一般質問をする議員が限られていることや、質問の内容、構築に関して、議会モニターから指摘が続」いたことが示され、「一般質問を政策論議の場として活性化するためには、細かなデータの事前把握方法の整理、所属している委員会の政策分野についても一般質問で政策論議ができる仕組みを整えるなど、今後、整理すべき課題が浮き彫りとなった」と受け止められている(1)。もちろん数がすべてではないが、16人の議員定数で、この頃、一定例会で3~5人の登壇が続く状況だったと聞くが、やはり寂しげであるとはいえるだろう。
第2期議会活性化計画では草案段階で、議会研修会の充実が盛り込まれており、2019年統一地方選での改選後の6月に「わかりやすい議会」、「結果を出す議会」、「開かれた議会」、「行動する議会」を目指す「第2期別海町議会活性化計画」を策定、一般質問をテーマとした研修を実施することとなり、8月30日、31日に、議会技術研究会・元芽室町議会事務局長の西科純氏と筆者がお伺いすることになった。
筆者は前任校である龍谷大学LORCの共同研究プロジェクトで開発した「質問力研修」を2011年から年1~2回開催していたが、それを縁として一般質問についての研修や講演を依頼されるようになった。
龍谷大学での「質問力研修」は1.5日~2日にわたり、講師陣や議員サポーターのチームを編成して講演と濃密なグループワークで構成される(2)。グループワークでは、「過去のうまくいかなかった一般質問」を持ち寄って、「なぜうまくいかなかったのか」を検討する。龍谷大学主催のものだけではなく、例えば2016年には北海道美深町で、美深町議員が呼びかけ、同町と近隣の希望する議員の参加で開催したり、芽室町議会とやはり近隣の希望する議員の合同での研修を開催したりした。
自治体議会からの依頼で筆者が研修や講演に伺うときは、レクチャー形式の話と質疑応答で2.5~3時間程度のものになることが多いが、時折、半日以上時間をとり「質問力研修」のスタイルを加味して、講演と、過去の質問を実際に数例使ってグループワークスタイルで一般質問の検証を行うことがあった。ただし、話を聞いて質疑応答する研修と異なり、「うまくいかなかった一般質問」を素材としてやりとりすることには抵抗感があるのは自然なことでもあり、長時間にわたることもあって、こうした研修を希望する自治体議会はあまり多くない。多くないが、確実に要望はある。別海町議会から依頼された研修はそのパターンだった。
一般質問は「添削」できない、では「これからする質問」は?
別海町議会での研修について触れる前に、もう少し、一般質問研修の講演ではない部分について筆者なりの認識を説明しておきたい。
一般質問について研修を依頼される折に、「添削してほしい」といわれることがある。しかし、一般質問の分析や検証はできても、「答え合わせ」という意味での添削はできない。「こう質問したら成功する」という解がそもそもないからである。ましてやその課題の背景や経緯、施策の方針や答弁者の個性も知らない者ができるわけがない。
ただし、例えばその一般質問の通告書や議事録を読み、質問者から課題の背景や趣旨を聞いて、質問と答弁を把握しつつ、「どうすれば有効な質問になったか」を分析し検証することであれば、できる。「質問力研修」が自分の一般質問を素材にしたグループワークを通じて受講者がその経験を積み、その後の一般質問の作成に生かすという研修になっているのも、このためである。
過去の一般質問の「添削」ができないのだから、未来の、つまりこれからしようとする一般質問の「添削」ができるわけがない。一般質問がどうやったら「うまく」いくか。その課題をめぐる固有の経緯や背景といった文脈、質問者の動機やその目指すものがそもそもその課題にとって望ましいものなのか。やりとりは首長だけでなく答弁者の選好や個性に左右されるし、初問が読み原稿だとしても、再問以降は、一部の議会を除けば、どう展開するか分からない。
「質問力研修」は研修の構想段階からそうした認識に立っていた。ただし、回を重ねる中で、「過去の質問の検証」でも、論点や論拠について分析することを通じて、同じテーマで練り直して改めて質問した、質問したいという声がよくあった。ならば、「検討中の質問」について、その論点を検討して鋭いものにし、論拠となる情報の入手や検証をサポートするなど、グループワークでの「作成支援」はできるのではないかと考え、質問力研修でもそのバリエーションを試行してみたことがある。ただし、「作成支援」として機能するためには、持ち込まれる「検討中の質問」とその質問にある質問者の認識や意図が具体化していて、課題をめぐる情報が蓄積していることが必要で、その準備は、たまたま一般質問の機会が間近で準備を進めていたということでなければ、手間がかかる。こんなテーマで質問しようかな、という状態であれば、検討を通じて伝えられるものも少なくなってしまう。
個別の議会での研修で「過去の質問の検証」をするためには、「うまくいかなかった質問」を披歴して、しかも1日研修であれば一部の議員のみがその役に当たることになるし、その議員が講師や他の議員にあれこれいわれるという形式自体を受け入れ、素材としての質問を自主的に提供してくれるのか、ということが障壁になる。「過去の質問」の添削や評価を依頼された場合にはこうした前提を理解していただき、可能なら行う。「しようとしている質問」への添削や評価を依頼された例がないわけではなかったが、前掲のような点や、自分の質問の「手の内」を見せ合うことが可能かと確認すると、それを超えて希望する議会はなかったし、筆者自身も質問力研修以外で、時間が長く確保できない研修ではそもそも難しいと考えていた。