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2021.08.12 コンプライアンス

第26回 兼職・兼業の落とし穴(前編)

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解説3 設問の検討
 それでは、以上を踏まえて今回の設問を改めて見てみましょう。
Q1について
 BさんはC建設株式会社の取締役ですので、C建設株式会社がA県との間で自治法92条の2における「主として同一の行為をする法人」となる場合、Bさんは当選告知を受けた日から5日以内に取締役を退任して関係を有しなくなったことの届出をしなければなりません(法104条)。「主として同一の行為をする」に該当するかどうかは、C建設株式会社におけるA県との取引の占める割合や内容にもよりますが、C建設株式会社の取引の半分を超えるような場合は通常該当するものといえます。
Q2について
 事業協同組合は中小企業等協同組合法に基づき設立される民間の法人です(同法3条1号、4条1項)が、同法人の役員につき地方自治体の議員との兼職を禁止する規定はありません。
 他方、法104条、自治法92条の2との関係で見ると、組合の顧問は組合の執行権を持っておらず、名目的・名誉職的な位置付けであることがほとんどですので、会社における取締役と同等の権限や責任を有しているとはいえず、自治法92条の2の「準ずべき者」にも当たりませんので、兼業は可能となります。もっとも、Bさんが理事などの執行権を持つ者であったり、顧問とはいいつつ執行権を持つ場合は「準ずべき者」に当たりえますので、組合がA県との間で「主として同一の行為」(自治法92条の2)をしていれば法104条に抵触します。
Q3について
 私企業において政治活動をすること自体は、当該企業秩序の問題ですので、C建設株式会社の就業規則等で社内での政治活動行為が禁止されていない限り、政治活動を行うことは可能です。
 もっとも、選挙運動にわたる行為やその潜脱としての政治活動は事前運動(法129条)となりますので、当然、行うことはできません。
Q4について
 Bさん自身の出自を紹介する程度を超え、積極的にC建設株式会社の事業等を宣伝する場合は、同社に対する無償でのサービス等財産上の利益ないし便宜の提供として寄附(法199条の2)に該当するおそれがあります。
Q5について
 特定非営利活動促進法において地方自治体の議員とNPO法人の理事との兼業は禁止されていないため、就任することに問題はありません。
Q6について
 特定非営利活動促進法は認定NPO法人の認定の要件として、政治的活動を行っていないことを求めています(同法45条1項4号イ(2))。他方、設問のような行為は、Bさん個人の政治活動として行われていても、Dの行事でDのパンフレットとともに配っているという態様からすれば、Dと一体となって政治活動を行っているものといわざるをえません。したがって、設問のような活動は行えないと考えられます。
Q7について
 Bさんのした祝賀旅行の招待の約束は、組合の会員(に属する個人)に対して投票を依頼し、その見返りとして個人に対する供応接待を申し込むもので、相手方が有権者であれば事前買収罪(法221条1項)となります。
 また、会員企業に対して県の事業の便宜を図ることの約束は、投票を依頼された者と直接利害関係のある会社への利益を示すことで投票を得ようと誘導する行為であり、利害誘導罪(法221条1項1号、2号)に該当すると考えられます。

まとめ

 兼職・兼業をする場合、兼職・兼業先との間で緊密な関係が生じますし、身内のような感覚になってしまうこともあります。仲間や支援者のような感覚で悪気なく法令違反行為を行ってしまうリスクも多いことに気づいていただけると幸いです。
 次回は、後編として兼職・兼業先の立場から気をつけるべき点について検討を行います。

* * *

 さて、本連載も回を重ねて様々な観点から検討をしてきましたが、今後、読者の皆様からの質問にお答えしてみたいと思います。裁判所や選挙管理委員会ではないので、個別事案の質問にはお答えできませんが、普段から「これってどうなの?」と思われている疑問をお寄せいただければ、紙幅の許す範囲で本コーナーにおいて取り上げていきたいと思います。

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