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2021.08.12 コンプライアンス

第26回 兼職・兼業の落とし穴(前編)

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解説2 兼職・兼業における注意点
 家業や何らかの肩書きを持ちつつ並行して公職者として活躍されている方や公職の候補者又は候補者となろうとする人(以下「公職者等」といいます)は実際に多く見られるところです。
 公職者等自身の活動は兼職・兼業先とは独立して行うものですが、兼職・兼業先は全くの第三者と異なり公職者等との関係が深いため、少なからず規制に抵触する可能性があります。
 今回は、兼職・兼業をしている公職者の行為について問題となりえる点について考えてみましょう。
1 寄附(法199条の2第1項)
 これまでの連載で見てきたとおり、公職者等が自己の選挙区又は選挙区域内の者に対し寄附をすることは禁じられています(法199条の2第1項)。
 公職者等が自らの兼職・兼業先を宣伝し、又は便宜や利益を図るような場合、態様によっては上記の寄附に該当する可能性があります。
 すなわち、「寄附」とは対価性のない金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付ですので、通常の対価を得ることなく便宜を図れば、その差額については財産上の利益が生じ、当該兼職・兼業先に対する「寄附」となりうるのです。
 例えば、公職者等が自身の経営する法人の商品をツイッターなどで殊更にアピールすれば、態様によっては対価なく宣伝を行っているとして寄附になる可能性がありますし、兼職・兼業先からの報酬や給与を自主的に返納すれば、返納分は兼職・兼業先に対する利益の供与となります。
 なお、兼職・兼業先の従業員や関係者に対して対価性なく金銭や物品を供与したり便宜を図ることは、もちろん禁止されます。
2 買収罪・選挙の自由妨害罪等(法221条、225条)
 公職者等としては、兼職・兼業先の職員や従業員、関係者が自らを支援して投票してくれることを希望するのは自然なことと思います。また、選挙運動は人がたくさんいればいるほど盛り上がりますので、職員や従業員、関係者にも手伝ってもらいたいという思いもあるかと思います。
 しかし、これを実現する方法によっては落とし穴があります。
ア 買収罪等(法221条1項1号~3号)
① 選挙人又は選挙運動者に対して、当選を得若しくは得させ又は得させない目的で金銭、物品その他財産上の利益や公私の職務の供与、供応接待などの申込み・約束をした場合、事前買収罪(普通買収罪)(法221条1項1号)が成立します。
  兼職・兼業先の職員や従業員、関係者等に対して、金銭や物品の供与、飲み会や旅行への招待といった慰安などの提案・約束や提供をし、公職者等への投票や選挙運動への協力などを求めた場合、事前買収罪が成立します。有権者(選挙人)に対する買収は「投票買収」、選挙運動者へのそれは「運動買収」と呼ばれます。
② 選挙人又は選挙運動者に対して、当選を得若しくは得させ又は得させない目的でその者又はその者と関係のある会社や団体等に対する特殊の直接利害関係を利用して誘導した場合は、利害誘導罪(法221条1項2号)が成立します。
  例えば、兼職・兼業先の職員や関係者等に対する投票や選挙運動への協力の見返りに、子女の就職のあっせんやその者の勤める会社への仕事の便宜を図ることの約束などが考えられます。
③ さらに、公職者等の当選後、投票行為や選挙運動の協力に対する報酬として財産上の利益や職務の供与、供応接待を行ったような場合は、事後買収罪(法221条1項3号)となります。
イ 選挙の自由妨害罪(法225条)
 公職者等の選挙に関して、有権者である兼職・兼業先の職員や従業員、関係者に対し、公職者等への投票をするよう求め、投票しない場合には職務上の不利益(配置や人事において不利に取り扱うとか、その者の関係する会社等との取引を止めるなど)を与える旨を発言するなどして圧迫する行為は、威力により選挙に関する自由な意思決定を妨害する行為として罰せられます。
3 NPO法人の理事等への就任と政治活動
 公職者等がNPO法人の理事等に就任することについては、兼職・兼業の禁止は及びませんので可能です。
 しかし、NPO法人のうち認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)の認定基準について定める特定非営利活動促進法45条1項4号イ(2)において、「政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対すること」を行っていないことが求められています。
 そのため、理事等に就任したNPO法人が認定NPO法人である場合、当該法人自体が政治活動に関わることができませんので、注意が必要です。

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