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2021.08.12 コンプライアンス

第26回 兼職・兼業の落とし穴(前編)

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解説

解説1 地方自治体の長や地方議会議員の兼職・兼業の制限
   1 兼職制限
   2 兼業制限(法104条)
解説2 兼職・兼業における注意点
   1 寄附(法199条の2第1項)
   2 買収罪・選挙の自由妨害罪等(法221条、225条)
   3 NPO法人の理事等への就任と政治活動
解説3 設問の検討

解説1 地方自治体の長や地方議会議員の兼職・兼業の制限
1 兼職制限
(1)地方自治法上の兼職制限
ア 原則

 地方自治体(法文上は「地方公共団体」ですが、なじみやすい「地方自治体」と記載します)である都道府県や市町村の長や議員(以下「公職者」といいます)は、他の地方自治体の公職者、常勤職員(特別職・一般職を問わず)及び短時間勤務職員(定年退職した職員等の再任用職員(地方公務員法28条の5第1項))を兼職することはできません(地方自治法(以下「自治法」といいます)92条、141条2項)。
 また、副知事や副市町村長、選挙管理委員も同じく兼職することはできません(自治法166条2項、141条、182条7項)。
 もっとも、地方自治体の公務員は在職中に公職の候補者となることはできず、立候補の届出日に退職したものとみなされるため(法89条、90条)、あまり当該条項が問題になることはありません(ただし、地方自治体の長又は議員が任期満了時にその長又は議員の選挙に立候補する場合は退職とはなりません(法89条2項))。
 なお、仮に上記の役職にあるまま地方自治体の長若しくは議員に立候補して当選した場合、兼職禁止の趣旨から当選告知を受けた日に辞職したものとみなされます(法103条1項)。
イ 例外
 一部事務組合の議会の議員・管理者(自治法287条2項)及び広域連合の議会の議員・長(自治法291条の4第4項)については、公職者の兼職が認められています。
(2)その他の法令による兼職制限
 自治法の定める上記兼職の制限のほか、他の法令により主に以下の職との兼職が禁止されています。
 ・裁判官(議員のみ禁止(裁判所法52条1号))
 ・固定資産評価員(議員のみ禁止(地方税法406条1項1号))
 ・行政委員会の構成員
  ─教育委員会の教育長・委員(地方教育行政の組織及び運営に関する法律6条)
  ─人事委員会・公平委員会の委員(地方公務員法9条の2第9項)
  ─公安委員会の委員(警察法42条2項)
  ─収用委員会の委員・予備委員(土地収用法52条4項)
  ─固定資産評価審査委員会の委員(地方税法425条1項1号、2号)
  ─海区漁業調整委員会の委員(都道府県議会議員のみ禁止(漁業法140条))
  ─内水面漁場管理委員会の委員(都道府県議会議員のみ禁止(漁業法173条、140条))
  ─港湾局の委員会の委員(議員のみ禁止。ただし、港湾局を組織する地方自治体の各議会が推薦した1人は除く(港湾法17条1項2号))
2 兼業制限(法104条)
(1)原則
 上記の兼職禁止は全て公務員ないし公的機関に関するもので、民間企業や自営業などについては原則として兼職・兼業が可能です。
(2)例外
ア 法104条

 法104条は、例外的に公職者が当該地方自治体と一定の関係(自治法92条の2、142条)を有する場合に、当選の告知から5日以内にその関係を消滅させなければ当選を失うものとして兼業を制限しています。
① 当該地方自治体に対して請負をする者又はその支配人
 ・①は、個人や個人事業主で請負をする場合を想定しています。なお、直接の関係があることが前提であるため、実例上、元請けからさらに請け負うような下請けの場合は含まないと解されています。ただし、実態として元請けと変わらないような態様・内容(例えば、元請けの実体がないとか、元請けが下請けと一体であると見うるような場合など)であれば適用の余地はあると考えられます。
 ・「請負」の解釈はかなり広く捉えられており、民法の「請負」(民法632条以下)契約に限らず、地方自治体の要請に応じて物品を供給するなど経済的ないし営利的な取引や業務行為は全て含まれると考えられています。
② 当該地方自治体に対して主として同一の行為をする法人の無限責任社員、取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずべき者、支配人及び清算人
 ・②は法人を対象としており、「主として同一の行為をする法人」とは、請負がその法人の業務の大部分を占めていることをいい、「当該普通地方公共団体等に対する請負が当該法人の業務の主要部分を占め、当該請負の重要度が長の職務執行の公正、適正を損なうおそれが類型的に高いと認められる程度に至つている場合の当該法人を指すもの」(最判昭和62年10月20日裁判集民152号51頁)とされています。同最高裁判例は、当該自治体からの請負料が法人の事業の過半を超える場合や、超えない場合であっても当該請負が当該法人の業務の主要部分を占め、上記のおそれが類型的に高いと認められる程度にまで至っているような場合にはこれに当たるとしました。
 ・「準ずべき者」とは、例示されている者と同程度の執行力と責任を有する者をいい、これに当たるかどうかは、肩書きだけでなく具体的な権限や責任で判断されます。
イ 法104条の例外
 地方自治体の長については、上記原則の②につき例外が設けられています。
 すなわち、上記②の法人について、当該地方自治体が資本金、基本金その他これらに準ずるものの2分の1以上を出資している法人については兼業の制限がありません(自治法142条かっこ書、地方自治法施行令122条)。これは、地方自治体が設立ないし関与して事業等を行う法人も存在することから設けられているものです。
 地方自治体の議員についてはこのような例外はありませんので、こうした法人の取締役や監査役等に就くことはできません。

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