2021.07.28 医療・福祉
第1回 「『地域共生社会』って何?」の巻
社会福祉士/介護福祉士/介護支援専門員/杉並区地域包括支援センター管理者 本間清文
「地域共生社会って何?」
役人 ……というわけで、トメさん、今年度から改正された介護保険が動き出しました。ケアプランの内容はこれまで以上にややこしくなりましたけど、分からないことがあれば……(言い終わらぬうちに)。
トメ 遠慮なく聞かせてもらうよ~! アタシャ、要介護の認定を受けているけど、まだまだ、若いモンには負けないからね! それから、戦争でまともに学校に行けなかったから、小難しい話はよしておくれよ! あと、耳が遠いから大きな声でね!
役人 初回だからお手柔らかに……。
トメ 早速だけど、介護保険法が改正されたっていうけど、新聞には「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」としか書いてなかったよ。そもそも地域共生社会ってのは何だい?
役人 平成28年6月2日に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」の中で示された概念で「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる社会」とされています。
地域共生社会の背景は?
トメ ずいぶん聞き心地のいい言葉だね~。しかし、そもそも、どうして地域共生社会なんて言い出したんだい?
役人 厚生労働省の資料に目を通すと、8050世帯(1)や、介護と育児のダブルケアなど一つの世帯において複数の課題が存在しているケースや、ごみ屋敷など世帯全体が地域から孤立しているケースの増加など、近年、地域住民が抱える課題が複雑化・複合化する一方で、従来の縦割り制度では対応できない問題が目立ってきています。それに加えて、我が国は今後、生産年齢人口つまり福祉人材の減少が進み、これまで同様の福祉サービスの確保に赤信号がともっています。そのため、地域共生社会が求められると結論付けています。
トメ 待てい! 論理が飛躍しとらんか?! 福祉ニーズが多様化、複雑化する一方で、それに対応する福祉サービスが不足するかもしれん、というのは分かった。しかし、だからといって、なぜ「子供・高齢者・障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことができる社会」(=地域共生社会)を創る必要があるんじゃ?!
役人 例えば、高齢者だからといってすぐにサービスの受け手になるのではなく、高齢者であっても、福祉サービスの支え手になることで、互いの暮らしや生きがいを創ることになるし、地域を創ることにもなります。高齢者だけでなく、子どもや障害者も同様です。そして、その先に地域共生社会はあるのです。
トメ 要するに、福祉サービスの供給ができなくなるから、地域住民の手弁当で何とかしろ。それが「地域共生社会」ってことかい?
役人 少々、乱暴な解釈かもしれませんが……。