2021.06.25 政務活動費
第1回 政務活動費による広報費の支出①
3 政務活動費から支出した広報誌の保存の是非
会派又は議員が政務活動費により作成・印刷し、住民等に配布した広報誌等については、政務活動費の支出に係る裁判が提起されなくなる時効が訪れるまで、必ず1部は保管することが適当である。
なぜなら、広報費支出に当たっての裁判において、政務活動費の支出の対象となった広報誌等が政務活動と合理的関連性があるかどうか、地方公共団体の政策等と合理的な関連性があるかどうか等が問われるからである。
つまり、合理的関連性があるかないかについて裁判所が判断をするに当たって、支出の対象となった広報誌等の現物を確認するか、その他の証拠によって当該広報誌等の内容を確認する必要が出てくる。
東京高判令和2年6月25日においては、①成果物としての広報誌等が現存する場合、②成果物としての広報誌等が現存しない場合、の二つの態様に分けて判決を下している。
すなわち、①の場合においては広報誌等の内容を確認し、当該広報誌等に係る按分率が適用された支出について適否を判断している。
【東京高判令和2年6月25日】
証拠によれば、Aは……按分率を49パーセントとし、Bは按分率を45パーセントとし、Cは按分率を30パーセントとし、その余はいずれも按分率を50パーセントとして、政務調査費として支出したことが認められる。そして、成果品である書証の記載内容に照らせば、少なくとも上記按分率の割合によって、政務調査活動と関連のある記載が認められる。よって、違法な支出であると認めることはできない。
②の場合においては、広報誌等が裁判所に証拠として提出されていなくても直ちに違法な支出と認定されることとはならないが、政党活動等の政務調査活動以外の内容が記載される可能性が否定できないため、他の証拠から当該広報誌等の内容が政務調査活動と関連することを立証することを求めている。しかし、他の証拠から広報誌等の内容が政務調査活動と合理的関連性があることを立証することは現実的に難しいといえ、それゆえ当判決では全体として成果物の提出のなかった広報誌について違法な支出であると判断している。
【東京高判令和2年6月25日】
原告は、議員が広報費を支出して作成した広報誌等の内容が不明であるから、政務調査活動と関連するとは認められない旨を主張し、被告らは、提出できる広報誌等について提出し、その余については、保管期限を徒過した等の理由により手元にないものの、そもそも、本件使途基準等では、成果品を議長に提出することを義務付けていないから、成果品がなくとも、違法な支出であるということはできない旨を主張する。
本件使途基準等において、成果品を提出することを明示的に定めた規定はないものの、広報誌等は、その性質上、政党活動等の政務調査活動以外の内容が記載される可能性が否定できないのであるから、成果品が残っていない場合は、その他の証拠により、政務調査活動と関連することが立証されない限り、政務調査活動との関連性がある部分とない部分との区別が判断できないから、全体として違法な支出であると認めるほかない。この点、成果品の提出がない……「書証」欄記載の証拠には、「広報紙」、「会報印刷」、「緊急アンケート郵送」、「栃木県フィルムコミッション事業について」、「ホームページのドメインサーバー代」、「ホームページ作成費」、「県政報告と後援会との共同資料」、「県政報告用資料」等との記載があることが認められるが、これらの表記によっては、いずれも政務調査活動に関連することのみ記載されたものとは認められないから、結局、全体として違法な支出であると認めるほかない。