地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2021.06.25 政務活動費

第1回 政務活動費による広報費の支出①

LINEで送る

 例えば、仙台高判平成30年10月24日では、広報誌等に議員の議会活動といった市政に関する情報を記載することは市政に関する情報を市民に広報する側面を有する一方、議員自らの議会活動、調査結果を市民に報告することによって支援者を獲得、保持するなどの政治活動、後援会活動としての側面も有するとしている。さらに、顔写真付きの議員個人のプロフィールや議員を激励するメッセージ、議員の活動内容や今後の取組み、経歴について記載されている場合には選挙活動等の目的も併存するとし、2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないとして50%を一つの基準としている。

【仙台高判平成30年10月24日】
 A議員は、同議員の議会活動報告等が記載された「A議会活動NEWS」という名称の広報紙を発行して市民に交付し、その作成及び交付費用19万3200円が政務調査費から支出されたことが認められる。
 証拠によれば、上記広報紙は同議員の議会活動といった市政に関する情報が記載されていることが認められ、このことからすれば、上記広報紙の交付は市政に関する情報を市民に広報する側面を有するといえる。
 しかしながら、一般的、外形的には、上記のような議員の議会活動報告等が記載された広報紙を作成して市民に交付(発送、郵送、配布、ポスティング……、新聞折込を含む。以下同じ。)する活動は、自らの議会活動、調査結果を市民に報告することによって支援者を獲得、保持するなどの政治活動、後援会活動としての側面を有すると推認される上、『A議会活動NEWS』の紙面をみると、表面中央部分には、顔写真付きで議員個人のプロフィールが掲載され、左上部には、B市長Cが『期待しています』とのタイトルで、同議員を激励するメッセージが掲載されているほか、A議員の活動内容や今後の取組み、経歴について記載されているものであって、同広報紙の作成・交付費用は、選挙活動等の目的も併存するといわざるを得ない。
 ところが、上記作成及び交付費用に関し、調査研究活動のみに利用されたこと又は調査研究活動に利用された割合とそれ以外の活動に利用された割合について、被告らから客観的資料に基づく立証は行われていない。
 そうすると、上記作成及び交付費用は、その2分の1を超えて政務調査費から支出することは許されないというべきである。

 また、広島高岡山支判平成31年1月17日でも、議員の選挙に対する所感や市政にかかわる議員の主観的意見は、活動の報告や客観的な情報を提供するものでなく、議員個人のPRを目的とするものであるから、広報誌等において一定程度の掲載割合を占めている場合は、50%相当における支出を認めることとしている。

【広島高岡山支判平成31年1月17日】
 市政報告紙は、2頁のうち1頁が、「今年の正月は気持ちよく迎えられました。それというのも、年末の二つの選挙、即ちA県知事選挙と衆議院選挙に勝利したことにあります。」「更に9月には、市長選挙があり、任期後半2年の議長選びが5月にあります。これらの重要な選挙にもリーダーシップを発揮するよう頑張って参る所存です。」から続く、B議員の諸選挙に対する所感で占められ、残り1頁の半分も、市政に関するとはいえ、B議員の意見で占められており、活動の報告や客観的な情報を提供するものではないから、いずれも議員個人のPRを目的とするものと認められる。
 したがって、上記各支出は使途基準に適合しないというべきであり、それぞれ被控訴人が求める50%相当額の限度で返還の対象となる。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 425

衆議院選挙で社会党第一党となる(昭和22年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る