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2021.06.25 政務活動費

第1回 政務活動費による広報費の支出①

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

1 広報費の条例使途基準における規定(会派交付を例とする)

 政務活動費における広報費については、全国市議会議長会では会派が行う活動、市(区)政について住民に報告するために要する経費と規定し、広聴費と分けて規定している。
 これに対し全国都道府県議会議長会では、広聴広報費として会派が行う(都道府)県政に関する政策等の広聴広報活動に要する経費としている。
 基本的には広報費に関する支出に当たっての経費に関する同様の解釈であるといえるが、場合によっては会派が行う活動の報告を含むか含まないかという部分が論点になり得る場合があることに留意を要する。

2 支出に当たっての按分率

 政務活動費から広報費を支出するに当たっては、対象となる広報誌等の内容とその割合等によって判断されることとなり、一般的に政務活動費からの支出割合が0%、50%、100%の率により判断されることが多い。
 過去には、広報費における顔写真やプロフィール等を一定程度含んだ広報費の支出については、東京高判平成18年11月22日のとおり会派の宣伝文句や顔写真の部分が掲載されていても、会派の主義・主張を掲載することは会派の議会活動のPRに含まれるものとして使途基準に反するものではなく、また、所属議員の顔写真の掲載も、記事の掲載主体である会派とその所属議員を明らかにするものであり、使途基準から許されないものではないとして、議員の顔写真やプロフィール等が多くの割合を占めても按分という考え方はとられず、全額の支出が認められる傾向があった。
 しかし、東京高判平成22年11月5日を境に裁判所の考えは変化する。すなわち、議員本人や後援者たる著名人の顔写真や氏名を目立つ場所に大きく記載することは選挙ポスターとあまり変わらない性質のものであるといえることから、それぞれの事案ごとに議員の個人宣伝的な側面と市政報告的な側面を判断して合理的な算定をしていくべきであるとされた。この判決後、多くの判例では按分率の適用として50%という率を使用することが多くなったといえる。

【東京高判平成22年11月5日】
 名前や顔写真の売り込み等の個人宣伝は、政務調査活動とはいえない。政治家の活動の上で広報活動と宣伝活動は紙一重であって、両者を峻別することは実際には困難であるのが通常であるとはいえ、宣伝活動のために政務調査費を利用することを「議員の調査研究に資する」ということは困難であり、納税者の納得も得られないと考えられる。そして、広報紙の内容が、議員本人や後援者たる著名人の顔写真や氏名を目立つ場所に大きく記載するなど、単なる議員個人の宣伝の場と化することが珍しくなく、このような選挙ポスターとあまり変わらない性質のものに政務調査費を充てることには納税者の厳しい目が存在することを考慮すると、印刷費用や配布費用のうち政務調査費を充てることができる割合については、事案ごとに合理的な算定をしていくべきである。
 内容は、A議員の個人宣伝的な側面と市政報告的側面が混在し、読者に訴える力はいずれの側面が明らかに強いともいえない。このように、読者に訴える力について、宣伝的な側面と市政報告的な側面のいずれかが明らかに強いともいえないような広報活動については、その費用の半額については「議員の調査研究に資する」ものとして政務調査費から支出することができるが、半額を超える部分については「議員の調査研究に資する」ものというには無理があり、政務調査費から支出することはできないと考えられる。

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