2021.05.25 コロナ対応
第77回 コロナ禍における一般質問の中止/監査委員の選任
明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦
コロナ禍における一般質問の中止
新型コロナウイルスがA市でまん延しており、執行機関の関係機関がその対応に忙殺されている。そこで、一般質問のあり方について議会運営委員会において議論がなされ、その結果、一般質問を中止とする答申が議会運営委員会より議長になされた。この一般質問の中止の答申を尊重して、議長は議事日程に一般質問を掲載せず、議員からの一般質問の通告があっても受理を拒否する予定であるが問題はないか。
議員が有する質問権は、議会の監視機能から派生している。すなわち、議会は執行機関による執行行政が適切に行われているかどうかのチェック機能を有することから、その構成員である議員にその機能が派生して質問権が与えられているといえる。 議員の一般質問は、標準市議会会議規則(以下「市会議規則」という)62条1項より、市の一般事務の範囲内で議長の許可を得て行うことができる。この規定の意味するところは、市の一般事務に対する一般質問を通告した議員に対し、議長は原則として質問を許可する義務があり、正当な理由がなければ質問の通告を不許可とすることはできないということである。
【市会議規則62条】
① 議員は、市の一般事務について、議長の許可を得て質問することができる。
② 質問者は、議長の定めた期間内に、議長にその要旨を文書で通告しなければならない。
一般質問が行われない、あるいは途中で一般質問を行わないのは、理論上、①一般質問の通告がない場合、②市会議規則60条2項により質問が続出して容易に終結しないとき、つまり質問議員が2人以上いて、同様の内容に終始する場合に質問終結の動議が提出され、議会が可決した場合である。
【市会議規則60条】
② 質疑又は討論が続出して容易に終結しないときは、議員は、質疑又は討論終結の動議を提出することができる。
しかし、実務的には本問におけるように、議長が議会運営委員会へ諮問し、議会で一般質問を中止する旨の協議・決定を行い、議長に答申することにより、議会運営委員会申し合わせとして、又は議長決定として各会派及び各議員に申し合わせを遵守・励行する旨を通知することにより質問を行わせない取扱いをすることがある。
さらに、申し合わせに反して一般質問を行おうとする議員がいる場合、質問省略の動議を提出し、議会で可決して質問を行わせないようにする取扱いもありうる。
そもそも一般質問の通告事項が市の一般事務の範疇(はんちゅう)である場合、議会運営委員会の協議を踏まえた議長の決定や議会運営委員会の申し合わせがあったとしても、一般質問の通告がなされれば通告が優先されることとなり、一般質問を行わせなければならない。
また、質問省略の動議が議会で可決されても、質問省略の動議がそもそも言論の府である議会に反する違法な動議であることから、法的な効力は何ら生じないので、市の一般事務の範疇である質問通告が提出されれば通告が優先されることとなる。
結局、一般質問を中止することを議長が決定又は議会運営委員会の申し合わせとしたとしても、議員がそれを遵守しなければ全く意味がない。1人が通告を申し出れば他の議員も通告を申し出ることとなることが想定され、何のための議会運営委員会申し合わせ又は議長決定か分からなくなる。万が一、適法な質問通告の受理を議長が拒否し、質問を行わせないとすれば、当然、懲罰の対象になりうることを留意すべきであるといえる。