2021.04.26 一般質問
第11回 一般質問を議会の政策資源に ①鷹栖町「週刊誌中づり広告風議会チラシ」とその核心
傍聴者による評価
残りの3分の1のスペースは、「声」を受けての工夫というよりも、さらにステージの違う取組みに使われた。
鷹栖町議会が「通信簿」と呼ぶ、傍聴者による質問の評価である。項目は、実施を重ねるなかで改訂され、今後も検討されるとのことだが、現在では、「テーマの設定」、「聞き取りやすさ」、「説得力」、「追及力」、(これら4つをふまえて)「共感力」となっている(詳しくは図3)。傍聴者にこれらの項目を5段階で評価して回収箱に入れてもらい、それを集計する。その結果は議員に共有され、議会報にも掲載される。最近は新型コロナ感染症の拡大もあり、票が少ないため議会報に掲載していないが、取り組みは今後も続けていくとのことだ。
図3 「通信簿」使いかたの説明資料
図4 鷹栖町議会報『孔雀草』180号(2020年9月定例会号)より
ちなみに、この取組みが初めて行われた2020年9月議会の折り込みチラシが以下である。
図5 鷹栖町議会2020年9月定例会チラシ(表面)
傍聴者が一般質問を評価しコメントすることの意義や価値は一般論として理解されるとしても、チラシ以上に拒否反応があることが懸念される、「すごいけど、どうやって合意できたのか」と問われる取組みではないだろうか。
この点を確認すると、まず、この「通信簿」、参加するか参加しないかは議員に委ねられているという。実際に1人の議員が参加していない。広報広聴委員会が仕組みを提供して、そこから先は議員の判断だということだ。
評価基準の公平性や客観性、動員による操作があったらどうするかも気になる点だろう。この点について片山議員は、「客観評価を目的とした仕組みではなく、傍聴者の感想を示して参考にするためのもの」で、選挙も突き詰めれば主観による選択ではないでしょうか、とする。選挙による信託を受けていない状況の中で、町民が傍聴してどう感じるかを引き出し、可視化したいという切実な意思を感じさせられる。青野議員は、議員が熱意を持って持論を提起する一般質問を聞き、評価することを通じて、「行政にも議会にも参加することになる」という。
動員については、悪意ある動員は考えていないという前提の上で、議員が、例えば好評価を得ようとして傍聴を呼びかけたのであれば、「それだけの応援団を傍聴に連れてこられることも議員の実力」であり、「議会としては傍聴者が増えるということなので問題ない」という。絶対値や議員同士の相対値として質問の「質」を測定するのではなく、「感想の可視化」であるとする。議員の任意による取組みとしながらも、「議会として」仕組みの意味と効果をとらえていることが、「やるかやらないか」というときに「やる」を支える基盤になっている。
「通信簿」の取組みから、議員同士でも一般質問について言葉や感想、意見を交わすことが増え、その意味でも効果を感じているという。