2021.03.10 コンプライアンス
第25回 政治資金パーティーでのあれこれ(2)
解説
解説1 政治資金パーティーにおける規制
1 寄附の禁止
2 事前運動の禁止(公選法129条)
3 あいさつ状の禁止(公選法147条の2)
解説2 設問の検討
解説1 政治資金パーティーにおける規制
政治資金パーティーの開催に当たっては、前回の解説のとおり規正法において規律がなされていますが、当然、公選法の規制の適用も受けます。ここでは、政治資金パーティーに関連して問題となりえるものについて確認してみましょう。
1 寄附の禁止
(1)後援団体に関する寄附の禁止(公選法199条の5)
政治資金パーティーは、政党や政治資金団体が主催する場合もありますが、特定の公職者や公職の候補者又は公職の候補者になろうとする者(以下「公職者等」といいます)の後援団体が行うこともよく見られます。
また、実行委員会方式で行う場合でも、特定の公職者等の政治活動支援や支持拡大等のために行われることもあります。
こうした特定の公職者等やその主義・施策の支持、特定の公職者等の推薦を政治活動の主たる目的とする団体は、公選法上の「後援団体」として、当該支持・推薦する公職者等の選挙区又は選挙区域内(以下「選挙区域」といいます)にある者に対する寄附が原則として禁止されています(公選法199条の5第1項)。
後援団体たる後援会のする寄附についての具体的な禁止と例外の内容は本連載第9回の記事を参照いただければと思いますが、その他の団体も含め政治資金パーティーの場面では以下の点が問題となりえます。
ア 無料配布、割引販売
地元の公職者等に対して「ご招待」の印を押して無料でパーティー券を進呈したり、後援会の幹事や会員に対して割引販売をすることなどが考えられます。
しかし、上記のとおり、後援団体は、原則として当該支持・推薦する公職者等の選挙区域内にある者に対する寄附が禁じられています(公選法199条の5第1項)。パーティー券の無料配布や割引販売は、パーティー券の対価の免除という財産上の利益といえ寄附に当たり、無料配布や割引販売の相手方が選挙区域内の者である場合、同条項に抵触します。
この点、同条項が寄附の禁止の例外として、後援団体がその団体の設立目的により行う行事又は事業に関する寄附について認めていること(同項ただし書)との関係が問題となります。
私見としては、この例外は行事又は事業そのものについての寄附を指し、行事又は事業そのものではない個別の寄附には及ばないと考えます。この例外が、原則として禁止しつつ後援団体の設立目的に基づく活動の確保と寄附による弊害との調整を図るために設けられていることからすれば、後援団体の上記活動そのものに必要な限度で例外が認められれば足り、上記活動そのものではない個別の寄附についてまで例外を拡大すれば、例外の範囲や認めることによる弊害が大きくなって規制の趣旨が骨抜きとなってしまうからです。
そして、政治資金パーティーにおいて、特定の個人に対してパーティー券を無料配布ないし割引販売することは、当該パーティーの事業そのものへの寄附ではなく、パーティー参加予定者個人に対する個別の寄附といえます。
したがって、上記例外の適用はないものと考えます。
イ 記念品の配布
政治資金パーティーでは、来場者に対して記念品を渡すこともあります。しかし、この記念品(の費用)は参加者が支払った対価に含まれているため、公選法上の「寄附」すなわち「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のもの」(公選法179条2項)に当たらず、禁止されません。
もっとも、記念品が参加者の支払った対価に比して対価性を欠くような場合(例:3,000円の参加費に対し、2,000円の食事と3,000円の記念品を贈呈するなど)には、対価性を欠く部分について寄附となる可能性があります。
ウ 政党や公職者等へのパーティー収益の寄附
政治資金パーティーは、主催団体ではなく特定の政党や公職者等の政治活動資金を確保する目的のために行われることがあります。この場合、主催した後援団体から支持する政党や公職者等への政治活動のための寄附につき、その性質により以下のとおり制限があります(公選法199条の5第1項)。
主催団体が、
a 後援会(規正法3条1項の「政治団体」)
・政党その他の政治団体に対しての寄附
可能です。ただし、政党・政治資金団体以外に対しては同一の団体に対し年額5,000万円までの制限があります(規正法22条1項)。
・公職者等個人に対しての寄附
選挙運動に関する場合を除き、金銭の寄附はできません(規正法21条の2第1項)。
b 規正法3条1項の「政治団体」以外の団体(会社や労働組合、副次的に政治活動を行っている団体など)
・政党その他の政治団体に対しての寄附
政党又は政治資金団体に対してのみ可能です(ただし、当該後援団体の資本金・出資金や組合員の数などに応じ年間の総枠制限があります。規正法21条の3第1項2号~4号)。資金管理団体を含むそれ以外の政治団体に対しては禁止されています(規正法21条1項)。
・公職者等個人に対しての寄附
禁止されています(規正法21条の2)。
c 規正法18条の2によるみなし政治団体
・当該政治資金パーティーの開催に関してのみ政治団体と扱われるだけですので、寄附の場面では政治団体以外の団体としてbに準じます。
・後援団体ではなく個人が開催した場合は、公選法199条の5第1項の適用はありませんが、政党その他の政治団体に対する寄附金額の総枠・個別制限(規正法21条の3第1項、3項、4項、22条2項)や公職者等の選挙運動に関する場合以外の金銭での寄附の禁止(規正法21条の2第1項)があります。