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第76回 物品の無償譲渡について/新型コロナウイルスに係る本会議の傍聴拒否

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明治大学政治経済学部講師/株式会社地方議会総合研究所代表取締役 廣瀬和彦

物品の無償譲渡について

Q

感染症予防の一環として、令和2年度一般会計の消耗品費でフェイスマスクを購入し、市内小中学生全員に配布することとしたが、令和2年度既決予算では予算が不足するため、補正予算又は予備費充用により予算を確保する必要があった。しかし、補正予算を待っていたのでは事業実施が遅れることから、予備費充用により予算を確保し事業を実施した。
 事業実施後、議員より「補正予算によらず、予備費充用により事業を行ったことは、公益上の必要について議会の議決を受けていない違法な物品の無償譲渡である。また、予備費の充用も、当初予算に計上されていない予算外の事業に充用することはできないし、違法な無償譲渡のための予算として予備費を充用することもできない」と指摘された。
 ここで、消耗品費で購入した物品を配布することは「物品の無償譲渡」に当たり、議会の議決が必要であるのか。
 なお、当該議員は、地方公共団体が寄附又は補助をする場合においては「公益上必要がある」ことを誰かが認定することが必要であり、この認定は、第一次的には長が、第二次的には予算の編成を決定する権限を有する議会が判断することとなり、したがって公益上必要かどうかを一応認定するのは長及び議会であり、よって議会の議決も必要であるとの指摘をしている。

A

本問は地方公共団体が行うフェイスマスクの市内小中学生への無償配布が、地方自治法(以下「法」という)96条1項6号における適正な対価なくして譲渡する場合に該当するかというものである。
 ここで法96条1項6号は、適正な対価なくしてこれを譲渡する、すなわち無償譲渡は原則として議会の議決の対象となると規定している。

法96条①6 条例で定める場合を除くほか、財産を交換し、出資の目的とし、若しくは支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し、若しくは貸し付けること。

 しかし、法96条1項6号の例外として、「条例で定める場合を除くほか」との規定があり、一般的には地方公共団体において「財産の交換、譲与、無償貸付等に関する条例」が制定されている。そして、当該条例には、物品の譲与に関する規定中に「公益上の必要に基づき、国若しくは他の地方公共団体その他公共団体又は私人に物品を譲渡するとき」物品を無償譲渡できるという規定があることから、地方公共団体が購入したフェイスマスクを小中学生に配布することについて法96条1項6号による議会の議決は必要ないといえる(当該条例がない場合は議会の議決が必要)。それゆえ、執行機関が公益上の必要があると判断すれば、小中学生へのフェイスマスクの配布は可能であるといえる。
 なお、法232条の2において、地方公共団体は公益上必要がある場合において寄附又は補助をすることができるとされているが、これは財産の無償譲渡についての一般原則について規定したものである。

法232条の2普通地方公共団体は、その公益上必要がある場合においては、寄附又は補助をすることができる。

 そのため法232条の2に基づく寄附又は補助について長及び議会が議決するのは、原則として予算に計上された額についてとなり、予算計上がなされておらず予備費から流用して支出された場合は、決算で認定するかどうかをチェックすることとなる。
 そして地方公共団体が行う無償譲渡等の具体的個別事項については、それぞれ地方自治法の規定があるものは、それによって判断することとすればよい。
 なお、予備費から無償譲渡のために流用したものについては、行政実例昭和45.9.25のとおり決算で議会がチェックすることとなる。

○地方自治法第232条の2の規定に基づく「公益上必要かどうか」の認定(行政実例昭和45.9.25)
問1 予備費を充用して、予算に計上されていない事業に対し補助金を交付した場合、これが客観的に公益上必要と認められるものでも、「公益上必要があるかどうか」につき議会の認定を受けていないものとして、行政実例(昭和28年6月29日付自行行発第186号)に照らし適切を欠くものと解してよろしいか。また、このような場合事前に議会の認定を受けるべきものとすれば具体的にどのような手続きによるべきか。
 2 予算計上の範囲内において、執行の際に補助対象事業、補助金額等が具体的に決定されて交付される補助金(多数の団体を対象とし、申請に基づき必要性を勘案して交付決定するもの)は、その具体的決定の際に議会の認定を受けるべきものとなるか。
答1 前段 予備費の充用により補助金を支出することについての議会の適否の認定は、決算認定等にあたり行われるべきものと解する。   
   後段 前段により承知されたい。
 2 予算審議の段階において包括的になされるべきものと解する。 

 以上より、本問における地方公共団体の無償譲渡によるフェイスマスクの配布は、法律上問題のないものであるといえる。

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