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2021.02.25 政務活動費

第17回 議員の責任

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 自治体議会議員に関する裁判例としては、武蔵村山市議会発言損害賠償請求事件・東京高判平成17年5月12日D1-Law.com判例体系 判例ID28252372が、議員に免責特権が与えられていない自治体議会においても、民主主義政治を実現するため議員としての裁量に基づく発言の自由が確保されるべきことは国会議員の場合と本質的に異なるものではないとの認識を示しつつ、議員による質問等は、執行機関に疑問点を質(ただ)し、所信の表明を求め、これにより執行機関の政治姿勢を明らかにし、それに対する政治責任を明確にさせたり、現行の政策を是正させるなどの目的等を有してされることもあることからすれば、議員が質問等において取り上げる問題、その質問等の方法・内容は、議員の政治的判断を含む広範な裁量に委ねられ、一般質問において個別の住民等の名誉を毀損・低下させる発言がされるなどし、結果的にその権利等が侵害されたとしても、直ちに当該議員がその職務上の法的義務に違背したと断定することはできないと判示。その上で、質問等が、その職務とかかわりなく違法又は不法な目的をもって事実を摘示したり、また、当該自治体の立法や行政全般にかかわるものでその職務権限に沿って行使したと認められる場合でも、虚偽であることを知りながらあえてその事実を摘示するなど、議員がその権限の趣旨に明らかに背いて行使したと認めうるような特段の事情が認められる場合には、その裁量に属する正当な職務行為とはいえないものの、そのような特段の事情がない限り、その質問等は、議員としての職務上の法的義務に違背したものとはいえず、正当な職務行為というべきであって、国家賠償法上の違法な行為とはいえないとしている(最決平成17年10月13日により確定)(6)
 同様の立場に立つものとして、七飯町議会懲罰動議事件・札幌高判平成29年5月11日判例地方自治423号18頁(7)などがある。
 他方、議員の議会内での発言が名誉毀損に当たるとして議員個人に賠償や謝罪広告を求める訴訟がしばしば提起されているが、請求を認めないものが多いといえる。
 先に紹介した最高裁平成15年判決は、原審の福岡高判平成12年11月22日判タ1102号209頁が、議会内の演説や討論であっても対立議員について政策論争や意見発表等の域を超えて誤った事実を披歴するなどの行き過ぎた議員の発言が不法行為を構成する場合には損害賠償責任を負うなどとして議員個人に慰謝料の支払を命じたのに対し、上記のように述べた上で、「上告人の発言が、仮に、被上告人の名誉を毀損する違法なものであるとしても……損害賠償責任を負うものではない」として、原審判決を破棄した。
 これを前提にすれば、議会内の質問や討論などとして行われた議員の発言については、議員個人が不法行為責任を負うことはないことになりそうである。ただし、議員の発言が、その外形から観察して議員の職務の範囲を逸脱する場合には、その職務を行うについてされたものとはいえないとされる余地もありうる。先に示した城陽市議会事件大阪高裁判決は、事前の通告書で質問内容として挙げていた項目と明らかにかかわりのない発言で、その外形から観察して単に一般質問の機会を利用して発言をしたにすぎない場合には、議員に付与された職務権限の逸脱とされる余地を認めているとも読みうる。
 他方、議員が議場や委員会で発したヤジなどについては、あくまでも不規則発言であり、議員の職務として行われたものと認められない可能性が高い。特に問題なのは節度や品位に欠けるヤジなどであり、執拗(しつよう)な個人攻撃や誹謗(ひぼう)中傷などその内容によっては名誉毀損等の責任を問われることにもなりうる。議長の許可を得ず、あるいは制止に従わず行われた発言なども職務行為に当たらないとされる可能性がある。ましてや、議場などで行われた暴力行為については、たとえ議会内のものであっても、当然、民事・刑事の責任を問われうる。
 非公式の理事会や協議会・懇談会、議会報告会などにおける発言は、職務執行といえるかどうかは微妙であり(8)、事案によることにもなると思われるが、いずれにしても裁判所の判断を待つことになる。

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