2021.02.10 議会事務局
第54回 議会事務局は議連・PTを手伝うべきか?
議会事務局実務研究会 吉田利宏
お悩み(公平・中立さん 50代 市議会事務局長)
ある市議会の事務局長をしています。事務局には議事調査課と庶務課があり、議事調査課に議事係と調査係があります。議員提案条例の立案などについては、このうち調査係が当たることになっています。これも議会改革の成果なのかもしれません。我が市議会においてもスポーツ振興議員連盟が中心となって条例を提案しようという動きがあり、事務局も参加して立案をサポートしてほしいとの要請を受けています。ただ、議会基本条例にも、会議規則にも「議員連盟」の文字はなく、しかもこの議員連盟(議連)には参加していない会派も一部あります。議会事務局は、どの議員、会派に対しても公平・中立でなければならず困っています。どのように対処すべきでしょうか。
回答案
A 議連やプロジェクト・チーム(PT)の活動は個々の議員や会派の活動の集合体であり、正式な議会活動ではない。会議規則に「協議又は調整を行うための場」として規定されているならともかく、事務局は一切、タッチすべきではない。
B 議連やPTでの活動は、議会活動につながり、議員提案条例、修正案、議会からの提案などと密接な関係がある。すべての活動に事務局としてかかわるべきだ。
C 議連やPTの運営面でのかかわりは一定の基準をつくった上で行うべきだが、法的な調査や条例案の立案などについてはできる限り対応すべきである。
お悩みへのアプローチ
「公平・中立に議員や会派に接する必要がありますから……」。こういって議連やPTへのかかわりを事務局から断られたという議員もいるかもしれません。都道府県ばかりでなく、比較的大きな自治体の議会では議連やPTの活動が盛んです。少し前のデータではありますが、意外に事務局が議連にコミットしている様子がうかがえるデータがあります。全国都道府県議会議長会事務局「都道府県議会における議員連盟の結成状況及びその活動状況等について」(平成20年3月)がそれです。47都道府県すべてに議連が存在し、35都道府県では「すべての議員連盟に何らかの対応をしている」(同資料4頁)とあります。ただ、その対応はそれぞれの県においてバラバラで、しかも、同じ県でも議連によってバラバラということがこの資料に添付されたデータからうかがえます。
議連は、国際交流の推進や社会資本の整備促進ばかりでなく、特定の分野の政策の推進のためにも結成されてきましたが、近頃はその延長線上で「条例をつくろう」とする動きに結びつくことも多くなりました。条例案作成という意味では、会派内や会派を横断して のPTも盛んです。昨年(令和2年)の議員提案条例の例でも、「長野県脱炭素社会づくり条例」(令和2年10月19日施行)、「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」(令和2年4月1日施行)は議連が先導しましたし、「埼玉県ケアラー支援条例」(令和2年3月31日施行)は自由民主党議員団の中に置かれたPTが、「岡山市動物愛護及び管理に関する条例の一部を改正する条例」(令和2年6月1日施行)は市議会6会派によるPTがとりまとめの中心的な役割を果たしています。このような状況の中、これまでどおり、「公平・中立」を貫けるか、事務局長にも不安が生じているのでしょう。