2021.01.29 文書図画
県議会議員選挙において変則的な形状のビラが選挙運動用 ビラとして届け出られた場合選管はこれを受理すべきか/実務と理論
4 設問の検討
以上を踏まえて、設問について検討する。
都道府県議会議員の選挙における選挙運動用ビラについては、その規格は、長さ29.7センチメートル、幅21センチメートルを超えてはならないとされており、法定記載事項として、その表面に頒布責任者及び印刷者の氏名(法人にあっては名称)及び住所を記載しなければならないとされている(法142条8項及び9項)。
規格内であれば形状について特段制限はないことから、選挙運動用ビラとして一般に用いられる方形以外の 変則的な形状のビラが届け出られた場合であっても、規 格内であって法定記載事項が記されていれば、受理することとなる。
ただし、近年はビラの形状も多様化し、いわゆる「うちわ状」のものなど、ビラなのかビラ以外の日用の用途に用いるものなのか判然としないものもある。このようなものの中には、法179条2項の「金銭、物品その他の財産上の利益の供与」である「寄附」に該当しないと断言できないものもありえるが、該当する場合は、選挙区内 にある者への公職の候補者等の寄附を禁止した法199条の2第1項の規定に抵触するおそれがあり、さらに態様によっては、当選を得る目的をもって金銭、物品その他の財産上の利益の供与等を行ったとして買収罪(法221 条1項1号)に該当する可能性もありえる。選挙運動用 ビラが実際に届け出られた場合においては、各選挙管理委員会は選挙運動用ビラとして用いられるものであることの確認を十分に行うとともに、これらの懸念点についても必要に応じ説明すべきであろう。
5 おわりに
以上、法における選挙運動用ビラについて主に形状の観点から検討を行った。なお、先に述べたとおり、令和2年12月12日以後に告示される町村議会議員の選挙から、選挙運動用ビラの頒布が可能となるため、町村の選 挙管理委員会においては、必要な規程の整備や証紙などの準備が必要となることにご留意いただきたい。
本問における検討が、改正法に関する理解と各選挙管理委員会における適切な選挙実務の一助となれば幸いである。