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2020.12.10 コロナ対応

第9回 災害としてのCOVID-19と議会自治

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災害対策としての「コロナばらまき」を止められるか

  「市民との対話の機会」についても指摘したが、行政との「話し合い」においても懸念がある。
  災害時には、緊急対応が求められるということを理由に、「議会(議員)は黙っていろ」となることが少なくないと指摘した。一方で、結果としては、専決処分でどうも納得できない支出が行われたという話も聞く。災害対応で専決処分を行った、となると、反対しにくいし、反対しても支出はされてしまった後、ということがある。
  災害は、時に「災害だから」という理由で大きな支出を、その出どころはさておいて、許すことになる。必要か必要でないかは、あらかじめ担保されていない。大規模な災害であれば、より大規模になる。
  この四半世紀、日本の自治体財政は厳しい状態が続いてきた。本来は、だからこそ、効果の高い〈政策・制度〉の模索と実践が期待されるはずだが、実際には、新しい構想、チャレンジングな取組みが萎縮して減少しているようにも見える。こうして政策の構想、手法の開発が薄くなったところに、一時的にしかも期間限定で資金が流れ込んできて、起こるのはバラマキである。コロナ対策として行われて執行率の低い事業をまとめ、手軽で多くの市民からも歓迎される「コロナばらまき」と呼ぶべき状況があることを危惧する。
  筆者は経済活動より感染対応を優先すべきという立場で、それは経済活動のボトルネックは結局のところ感染への不安に帰着すると考えるからだが、経済活動を止める分、痛みのしわ寄せがいく存在、社会的に弱い存在には、補償と保障で対応するべきだと考える。ここで「バラマキ」というのは、こうした「健康で文化的な最低限度の生活」以下になることを防ぐ税の再配分でも、生命身体の危機を救う緊急のものでもなく「税金でトクをさせる」ものを指す。
  ふるさと納税なのか、プレミアム商品券なのか、起点をいつにするかにせよ、2020年の日本では、「税金で(自分が)トクをする」という税の使い方が、タブーではなくなってしまった。そのことの問題が今、「コロナばらまき」として如実に現れてしまっている。
  長引く災害で、「我がまちは何をしているのか」、「何をしてくれるのか」と市民が問う。行政も、議員も、議会も、それぞれに「何をするのか」が問われる。本来は人々の集合のためのもので自分のものではなくなった税という政策資源を、手元に戻してトクをする。それがタブーでなくなったから、それを公約とする候補者が登場し、首長となる。そうなったら、行政の内部では止められない。それに「議会として」待ったをかければ、「議会のせいで」といわれる。それにすべての議会が耐えられるか。

議会の価値をダンピングしない「議会自治」

  多様な議員の意思を集約して「議会として」決断する過程は、本来は「話し合い」を通じたものになるはずだ。平時では議会運営のルーティンの中にその機会が収まっていることが多い。だが、災害時では、冒頭に示したように、議論すべき争点、議論する座組みや場が予定調和したものとしてできるわけではない。特に今回のような「対面で話し合うことに制約がある」災害であればなおさらである。
  しかし、話し合うべき論点がないわけはない。むしろ「議会として」どう対応するかが問われるのであれば、予定調和ではない変化する状況の中で「議会として」意思形成する、つまり話し合って決めて出すしかない。
  一方、「コロナ(という災害)だから」として「議会として」の意思形成の機会つまり話し合いの機会を「自粛」することは、議会そのものの価値を問われる。「議会として」の意思形成に価値があるなら、直接対面できないときには代替手段を、できるときにもCOVID-19という災害の現状にふさわしい対応をして、行うべきだ。それを諦めるのは、議会の価値を自らダンピングする行為といわざるをえない。
  災害時に何ができるかは、月並みだが、平時の積み重ねによる。災害時に「議会として」意思形成を柔軟にすることができるのだとすれば、おそらく平時からその経験があると想定できる。
  言い換えれば、議員の集合体としての「議会自治」の力である。
  「議会自治」の力は伸長させることができるか。できるとすれば、それは、「議会として」が求められる機会に、そのための意思形成の経験を重ねることである。「議会自治」にかかわる話し合いの場面は二つある。一つは、「我がまちの課題」つまり〈争点〉をめぐる意思形成の機会、もう一つは、「我々の組織の課題」つまり議会運営にかかわる意思形成の機会である。議会基本条例をつくるときに一時的に「チーム議会」としての認識や力が上がるのは、「我々とは何者か」を議論して認識を共有しているからだといえる。逆にいえば、これらの機会を、党派で分断された単位のみで検討し擦り合わせていたり、「自分たち(議員間)」で決めるべき議会運営にかかわる内容をお世話係としての事務局に任せていれば、「議会自治」の力は育たない。
  災害は、この文脈では、平時では問われない〈争点〉と「運営」をめぐる話し合いの機会をもたらす。ここで、「議会として」誰と、何をめぐって、どのように議論するかという課題に向かい合う、つまり「議会自治」の力が、すべての議会に求められているのではないか。現場でその課題に真摯に向き合う関係者に敬意を表したい。

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