2020.11.25 広報広聴
第2回 広聴活動の現状分析と新たな政策構築の手法の提案 ──岩手県北上市の事例
5 タウンミーティングにおけるコミュニケーション分析〜テキストマイニングの活用
政策提言の②において、テーマ設定の考え方について述べましたが、その根拠となる分析についてここで説明したいと思います。過去20回実施されたタウンミーティングの広聴テーマを用いて、市民がどのようなことに興味関心を持っているのか傾向を把握するため、テキストマイニングという手法で分析を行いました。
テキストマイニングは、広報広聴活動に有効です。政策づくりにも活用できます。特にコロナ禍において三密回避が求められているため、face to faceでの意見聴取は難しくなっています。しかし、テキストマイニングを活用すれば、コロナ禍においても住民の意向
を把握できる可能性が高まります。
テキストマイニングとは、定型化されていない文字情報の集まりを自然言語解析などの手法を用いて解析し、何らかの有用な知見を見つけ出すことです。エクセルなどを用いたデータ分析はよくご存じかと思いますが、テキストマイニングは言葉の傾向を見るものだ
と思っていただければよいと思います。
筆者が勤務している民間企業の事例を紹介すると、アンケートの自由記載やインタビューなど、数値化できないものを分析するのに非常に役立ちます。新商品の開発における調査では、類似する商品に関する消費者の意識調査や、新製品の試作品に対しインタビュー
を実施することがあります。選択肢から選ぶのではなく、消費者の生の意見を収集したときに、文章から傾向を分析できるテキストマイニングを活用します。これは自治体の政策づくりにおいても大いに活用できます。
テキストマイニングツールはいくつかありますが、筆者はAIテキストマイニング(UserLocal)を使用しています。社会調査等の学術論文を書く際は、KH Coder(2)なども参考にしてください。
今回の事例では、過去のタウンミーティングで出てきた単語の傾向と、先ほどご紹介した、北上市市民意識調査に掲載されている優先改善施策との比較分析を実施しました。これまでのタウンミーティングではテーマが設定されていなかったため、参加者の属性によ
り関心の高いテーマに内容が偏ってしまい、優先度の高い施策について幅広く意見交換がなされていないことが分かりました(図3)。テーマ設定はバランスよく考えていくことが肝要であることが、本分析でお分かりになると思います。