2020.11.10 広報広聴
第8回 広報広聴とpublic relations
市民の「限定」とコロナ禍の広報広聴を考える
現状の、市民の声から〈争点〉を選び出すための「対話の機会」が十分に機能していないことから、対象を限った話し合いの機会が設定されることがある。「対話の機会」の目的として、対象を絞ることは十分にありえる。そのテーマの当事者として〈政策・制度〉のありようにより影響を受ける存在ならなおさらである。
ただ、そうした限定した市民にだけ機会が設定されているのは、「開かれた」議会とはいえない。地区ブロックに分けて、ただし、他の地区や自治体全域の話題や参加者を分けないということであれば、限定したとはいえないが、「市民であること以外に何も属性を持たない」存在が議会とつながる機会がなければ、それは、「参加する市民を限定した機会」にとどまる。対面での機会に限らないとしても、「市民であること以外に何も属性を持たない」市民との関係構築が、public relationsには不可欠であることを指摘しておきたい。
また、COVID-19影響下いわゆるコロナ禍中で、市民との話し合いが止まる自治体議会が多いことを耳にする。議会日程は9月からほぼ平常通りに回復しているが、議会報告会については「今年度中止」を早々に決めたところが多い。しかし、市民との対話が必要不可欠であるならば、感染対策の上で実施を模索するべきだ。
常任委員会などごとに分散して行う、会場の広さに合わせ定員を決めて申込制にする、感染者発生時のために連絡先を記入してもらう、当日の体調確認と検温を行う、受付時の手指消毒とマスクオンを確認する、といった方策と、そうした方策で開催することを周知するといったところが現状の標準的な要件ではないだろうか。
そしてこのように実施したとしても、基礎疾患のある市民は参加できない。ここでも「限定」される可能性がある。であれば、直接対面の機会に限らず、広く市民に「開かれる」機会の模索を進める必要がある。市民との対話を止めない、そのことが議会に必要不可欠なのか、議会が市民とどのような関係を築こうとし、あるいはしていないのかが、改めて問われてくるといえる。