2020.06.04 コンプライアンス
第21回 自宅等でできる政治活動【コロナ禍によるステイホーム期間での注意点】
解説2 設問の検討
いつも問題になる寄附ですが、ここでも意識をする必要があります。
外出や活動の自粛が社会・経済への影響が懸念される中、自ら動くことができなくとも経済的な面での支援をしようということもあるかと思います。そんなときに「うっかり違反」とならないよう要件を復習しましょう。なお、寄附の禁止に関する詳細はこれまでの記事で詳細に解説していますので、ぜひご覧ください。
1 寄附に当たるもの
公選法の「寄附」は、「金銭、物品その他の財産上の利益の供与又は交付、その供与又は交付の約束で党費、会費その他債務の履行としてなされるもの以外のもの」(公選法179条2項)を指します。
すなわち、金銭や物、サービスなどの種類を問わず、財産上の利益を与え、又は対価性がなかったり不相当なものが寄附に当たります。また、債務の免除も相手方に対して財産上の利益を与えることになりますので、寄附に該当します。
さらに、実際に渡したり利益の移転がない単なる「約束」だけでも寄附になります。
2 公職者等の寄附
(1)原則(公選法199条の2第1項)
公職者等からの、自らの選挙区域内にある者に対する寄附は原則として禁止です。
対象は、有権者にとどまらず、一時的に滞在する人や選挙権がない人、選挙区域内に支店や事務所のある法人・団体、さらには選挙区域を包摂する国や地方自治体も含みます。
(2)例外(公選法199条の2第2項)
公職者等が寄附をすることができるのは、以下の場合に限られます。
① 政党その他の政治団体又はその支部への寄附をする場合(ただし、「政治団体」が自らの後援団体(政党・支部を含む)に当たるときは、一定期間(公選法199条の5第4項)中は原則どおり禁止です)。
② 公職者等の親族に対してする場合。
③ 自らが選挙区域内で行う専ら政治上の主義又は施策を普及するための講習会・政治教育のための集会に関し必要やむをえない実費補償をする場合(ただし、一定期間(公選法199条の5第4項)中や、食事についての実費補償、饗応接待等はできません)。
(3)違法であるが罰則のないもの(公選法249条の2第3項)
以下の場合は、違法ですが罰則はありません。
① 結婚披露宴に自ら出席しその場においてする当該結婚に関する祝儀(物品も可)。
② 葬式・告別式に自ら出席しその場においてする香典等の供与(金銭に限る)。
③ 葬式の日(葬式が2回以上行われる場合にあっては、最初に行われる葬式の日)までの間に自ら弔問しその場においてする香典の供与。
なお、上記が選挙に関して行われたり、通常一般の社交の程度を超える場合には、罰せられます。
3 公職者等の寄附に関連する規制
公職者等本人の寄附ではなくとも、本人が関連する会社や団体が寄附をする場合にも注意が必要です。
(1)公職者等が役職員や構成員である会社・団体等について
公職者等の氏名そのものを表示したり氏名を類推できる形で、政党などの政治団体やその支部以外に選挙区域内の者に対して寄附をすることはできません(公選法199条の3)。
(2)公職者等の氏名や氏名が類推される名称の会社・団体について
その公職者等の選挙に関して、選挙区域内の者に対して寄附をすることはできません(公選法199条の4)。ただし、本人や政党などの政治団体やその支部に対しての寄附はできます(公選法199条の4ただし書)。