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2020.03.10 コンプライアンス

第20回 アナログだけど大事なツール(ポスター・のぼり編)

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解説

解説1 ポスター・のぼりなど
   1 原則
   2 規制の内容
解説2 設問の検討

解説1 ポスター・のぼりなど
 政治活動用ポスターや街頭演説時などで掲げるのぼりは、一般的に文書図画の掲示に当たります。
 文書図画とは何か、掲示とは何かについては、連載第1回(2017年7月10日号)記事にて解説していますのでご覧ください。
 このような文書図画の掲示について、公選法は主体を分けて規定をしています。以下、主体を分けて見ていきましょう。

1 原則
(1)公職者等の個人や後援団体
 政治活動用の文書図画の掲示については、基本的には自由なのですが、公職者等の氏名・後援団体の名称又は公職者等の氏名類推事項を記載する文書図画については、公選法143条16項1号から4号の定めるものに限定されます。
 なお、「後援団体」とは、公選法199条の5第1項に定義される「後援団体」と同義であり、
 ① 政党その他の団体又はその支部で
 ② 以下のいずれかが団体の政治活動の主たるもの
  ア 特定の公職者等の政治上の主義若しくは施策を支持すること
  イ 特定の公職者等を推薦・支持すること
がこれに当たります。
 また、政党は通常では支部長などの公職者等を支持・支援することが多いですが、他の全般的な政治活動も行っており、一般的には「主たる」の要件を満たさず、ここにいう後援団体には当たらないものとされています。反対に、特定の公職者等の政策支持や推薦等を主たる目的として活動する政党や支部があれば、その政党や支部は「後援団体」となります。

(2)後援団体以外の政党その他政治活動を行う団体
  選挙が行われている期間の政治活動については公選法201条の8以下の規制を受けますが、平時の政治活動においては基本的に自由です。
  もっとも、当該活動が特定の公職者等や後援団体の政治活動のためになされていると見られる場合は、上記(1)の規制を受けます。
 
2 規制の内容
(1)公職者等の個人や後援団体
  上記のとおり、政治活動用の文書図画のうち一定のものの掲示については公選法143条16項1号から4号の規制を受けます。以下、その内容を見ていきましょう。
ア 対象
  対象となるのは、
  ①  公職者等や後援団体(公選法199条の5第1項)の政治活動のために使用されるものであること
  ②  公職者等の氏名・後援団体の名称又は公職者等の氏名類推事項を記載する文書図画であること4
の要件を満たす文書図画です。
イ 掲示できる文書図画
  掲示ができる文書図画は以下のものに限定され、それぞれにつき要件や例外が定められています。
  (ア)立札・看板の類(1号)
  典型的な立札・看板のほかに「の類」といえるものについても本条項の規制を受けます。例えば、横断幕やプラカード、のぼりなどもここにいう「の類」に当たるものと考えられています。
  a 記載の内容
  公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称のほか、政治活動に関することを記載できます。他方、特定の選挙に関する記述や投票呼びかけの文言などは事前運動とされるおそれがあります。
  b 設置場所
  当該公職者等や後援団体が政治活動のために使用する事務所に設置できます。
  ここにいう「事務所」は、名目だけでは足りず、具体的に政治活動に関する事務(例えば、支援者拡大や政策立案のための定例会議を開いているとか、ビラやパンフレットの作成、政策懇談会や演説会の運営を行っているなど)を行っていることが必要です。そのため、立札・看板を立てるためだけに形だけ「事務所」としておくとか、後援会団体の会員であるからという理由だけで立札・看板を掲げることはできません。
  また、事務所の設置場所といえる場所に立てなければならず、何もない畑や空き地などに立札・看板を立てた場合は、公選法で認められた文書図画の設置ではなく違法です。
  c 総数(公選法143条16項、公選法施行令110条の5)
  無制限に掲げることはできず、数の制限があります。
  【1か所当たりの数】
   合計2枚まで。裏表に表示した場合はそれぞれ1枚(合計2枚)となります。
  【設置できる総数】
無題
    この場合の後援団体は、同じ公職者等の後援団体が複数ある場合、全ての後援団体で合算した総数になります。つまり、ある公職者等に複数の後援団体がある場合はそれぞれに上記の数が認められるのではなく、複数の後援団体全体で上記総数までとなります。
  d その他の要件
  【大きさ】
    立札・看板の大きさはタテ150センチメートル、ヨコ40センチメートル以内でなければなりません(公選法143条17項)。ちなみに、上記大きさには立札・看板の「足」も含むとされています。
  【証票の貼付】
    立札・看板には選挙管理委員会から交付を受けた証票を貼り付けなければなりません(公選法143条17項、公選法施行令110条の5第4項)。
    なお、後援団体が証票の交付申請をするに当たっては、後援する公職者等の同意を得る必要があります(公選法施行令110条の5第5項)。

  (イ)ポスター(2号)
  a 記載の内容
  立札・看板と同様、公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称に加えて、政治活動に関することを記載できます。
  しかし、名前をことさら大きく表示することや、特定の選挙に関する記載や投票を呼びかけるような記載がある場合は、事前運動とみなされるおそれがあります。
  b 数・大きさ
  法令上、数や大きさに制限はありません。しかし、1か所にあまりに大量に並べて掲示したり、巨大なポスターを掲げるなどは事前運動と判断される可能性があります。
  c 掲示場所
  掲示場所について公選法では定めがありませんが、選挙時の政党その他の政治団体等の政治活動ポスターの設置場所の制限(公選法201条の11第6項、145条)との関係から、国や地方公共団体の管理・所有に係る場所については原則として掲示すべきではありません。また、他人の土地や工作物に掲示する場合は事前に承諾を得ておく必要がありますし、各自治体の景観条例等の掲示物の制限を遵守しなければなりません。
  d 特定事項の表示
  ポスターの表面に掲示責任者及び印刷者の氏名(法人の場合はその名称)及び住所を記載しなければなりません(公選法143条18項)。
  e 掲示が許されない例外(公選法143条16項2号本文及びかっこ書)
  ①  事務所・連絡所の表示や後援団体の構成員であることを記載したポスターを掲示することはできません。
  ②  いわゆる「裏打ちポスター」を掲示することもできません。「裏打ち」とは、ポスターの裏面がベニヤ板、プラスチック板や段ボール、金属などで補強されたものをいいます。この禁止の趣旨から、型枠にはめ込んで掲示する方法や、あらかじめポスター6
を掲示することを予定して掲示板を作成・設置してそこにポスターを掲示した場合もこれに当たりうるものとされています。
  ③  いわゆる事前ポスターにつき「一定期間」中は一律に掲示できません。この「一定期間」は、
   ・ 任期満了による選挙の場合は、任期満了日の6か月前の日から投票日までの期間(公選法143条19項3号)
   ・ 任期満了以外の理由による選挙の場合は、選挙を行うべき事由が生じたことを告示した日の翌日から投票日までの期間(同項6号)
    となっており、寄附の禁止の「一定期間」(公選法199条の5第4項)と期間が異なりますので、間違えないようにしてください。

  (ウ)演説会等の会場における文書図画(3号)
  演説会等とは、「公職者等や後援団体の政治活動のために行う演説会、講演会、研修会その他これらに類する集会」のことで、「市政報告会」などの名称に関わりなく、その集会の性質や内容によって「演説会等」に当たるかどうかが判断されます。
  なお、「集会」ですので、個別面接の形ではなく不特定又は多数の者を集めて開催する会合を指します。
  a 記載の内容
  公職者等の氏名や氏名類推事項、後援団体の名称のほか、選挙運動にわたらない限り政治活動に関する記載ができます。
  b 掲示できる文書図画の種類
  種類については制限がありませんので、ポスターや動画、垂れ幕なども使用できます。
  c 掲示できる時期・場所
  演説会等の開催中ですので、まさに開催時間中かそれに接着した時間帯に限られます。開催当日の早朝からとか、終了後の片付けが終わっても掲示したままにすることは、接着した時間帯とはいえません。
  また、条文は「会場において」としています。この「おいて」は、会場内のみならず、会場外であっても合理的に判断して会場といえる場所(例えば、会場までの廊下や会場建物の入り口)であれば掲示することができます。会場外の周辺地域に置く「◯◯演説会会場はこちら」といった案内板などは「会場において」とは言い難く、認められないと考えられます。
 
 (エ) 確認団体が選挙時に掲示できる文書図画(公選法201条の8第1項、201条の9第1項等)
  後援団体が上述の確認団体に当たる場合、当該選挙時に一定の条件で立札・看板の設置やポスター等文書図画の掲示をすることができます。
  ビラと同様、本稿では平時の政治活動について述べていますのでここでは触れませんが、詳しくは連載第10回「政治活動の要『後援会活動』(選挙時編1)」(2018年11月26日号)記事にて説明していますのでご参照ください。

  (2)後援団体以外の政党その他政治活動を行う団体
 後援団体以外の政党その他政治活動を行う団体につき、平時の政治活動におけるポスターやのぼりに関する特有の規制はありません。
  ただし、その活動が特定の公職者等や後援団体のためになされるものである場合、(1)の規制に服することは上述のとおりです。
  なお、選挙時における政治活動については、確認団体であれば、上記(1)(エ)で述べたと同様、文書図画の掲示ができますが、確認団体ではない政党その他政治活動を行う団体はこれを行うことができません。

(3)共通の規制
  上記(1)、(2)いずれの場合でも、政治活動用ビラにおいて検討した事前運動の禁止や虚偽事項公表罪・名誉毀損罪等の適用があります。
  したがって、許されたポスターやのぼりの掲示の場合であっても、その内容や掲示方法によっては事前運動とされることがありますので、その点でも注意が必要です。
 

 

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