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2020.03.10 政務活動費

第9回 政務活動費と説明責任

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裁判例から見た説明責任

 政務活動費の不正使用について司法で争われる場合、住民(原告)が長を被告として、長が当該議員に対し、政務活動費を充てた支出につき不当利得として返還を請求することを求める住民訴訟(4号請求)の形をとるのが一般です。議員は直接被告とはならず、被告側に補助参加して当該支出の適正性を争うことになります。
 訴訟には主張立証責任というルールがあります。不当利得返還請求の場合、原告は当該利得に法律上の根拠がないことなど不当利得の成立要件に該当する事実を主張立証する責任を負い、これに失敗すれば敗訴します。
 しかし、政務活動費の場合、議員には、支出に関する書類の作成や、収支報告への証憑書類の添付、書類等の一定期間の保管などが条例や手引などで義務付けられているのが一般です。つまり、裁判の証拠となり得るものは通常は議員側にありますから、原告側から見れば、当該支出が違法であり不当利得が成立することを逐一立証するのはなかなか難しいということになります。
 そこで、近年の裁判例では、原告が当該支出につき政務活動費の使途基準に適合しないことを推認させる「一般的・外形的事実」を主張立証した場合、被告(議員側)が適切な反証を行わないときは、当該支出は使途基準に適合しない違法なものと判断するとされています。ここでいう一般的・外形的事実とは、「普通に考えれば政務活動費を充てるのはおかしい」という事実のことです。
 例えば、議員が購入した書籍が幼児向けの絵本だった場合、普通に考えれば議員自身の調査研究のためとは見えないでしょう。そのため、原告が「幼児向けの絵本を買った」という事実を主張立証すれば、今度は議員の方が、自分の調査研究のためであるという事実を主張立証しなければ、絵本の購入は政務活動費の使途に適合しない違法な支出とされるでしょう。議員としては、当該支出の合目的性について説明責任をより積極的に果たさなければ、裁判で負けてしまうのです。このことからも、政務活動費の使途の適合性すなわち合目的性に関する議員の説明責任は極めて重要だといえるでしょう。
 もっとも、政務活動費の使途に疑念を持たれて訴えられること自体、議員にとって痛手であるだけでなく、議会全体の信用にも影響してきます。住民に疑われるような使い方をしないよう、議員一人ひとりが趣旨をよく理解して、政務活動費と向き合うことが必要だと思います。

(『自治体法務NAVI』「とっても身近な自治体法務シリーズ」2020.1.15号より転載)

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