2020.02.25 選挙
動画共有サービスと選挙運動/実務演習〈地方行政〉
5 設問の検討
以上を踏まえて、設問について検討する。
(1)設問①について
「ウェブサイト等を利用する方法」による文書図画の頒布は一般の有権者も含め行うことができるが、コンサルタント会社に自身への投票を呼びかける動画を主体的に企画作成させる行為は当該業者が選挙運動の主体と解されることから、当該業者への報酬の支払がある場合には、買収に当たるおそれが強く、法221条1項の規定により3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処せられる可能性がある。
(2)設問②について
法142条の6第1項の規定により、何人も、選挙運動のための候補者の氏名若しくは政党等の名称又はこれらの類推事項を表示した有料インターネット広告を表示することはできないとされている。
そして、設問におけるBのイメージカラーのジャンパーを着た者が「投票に行こうよ」という内容の「5秒スキップ広告(有料)」を掲載する行為については、選挙運動期間中に候補者が当該行為を純粋な啓発行為として行うことは考えにくく、候補者のイメージカラーのジャンパーを着ていることも踏まえれば、選挙運動性を排除できない行為であると考えられる。
しかし、当該候補者にとってある色がイメージカラーであったとしても、その色を見た者に当該候補者の氏名を類推されるような効果があるとはいいがたく、一般的にはイメージカラーの使用のみをもって氏名類推事項の表示に当たるとはいいがたい。
そのため、直ちに法142条の6第1項に抵触するわけではないが、イメージカラーの使用が一定の形状をなしシンボルマークと認められ、さらに、当該シンボルマークが当該候補者の氏名類推事項と認められる場合等には、行うことができない。
(3)設問③について
政党等については、法142条の6第4項の規定により、同条1項に該当するものを除き、選挙運動期間中、当該政党等の選挙運動用ウェブサイト等に直接リンクした有料インターネット広告(有料バナー広告)の掲載が認められている。
そのため、政党等の名称を表示した有料バナー広告自体が法142条の6第1項の規定に違反する(選挙運動のための有料インターネット広告と認められる)場合等を除き、特段問題のないところである。
6 おわりに
以上、動画共有サービスと選挙運動について、設問に従って検討を行った。本問が各地方団体における公職選挙法に関する理解及び適切な事務遂行への一助となれば幸いである。
(※本記事は「自治実務セミナー」(第一法規)2019年12月号より転載したものです)