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2020.02.25 議員提案条例

第5回 議論する議員提案条例③ ─議会での議論を深めるための首長提案条例の一部修正─

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3 議員修正のテクニック

 では、議員修正は、どのように行えばよいのか。首長提案の条例議案の議員修正の一般的な流れは、おおむね次のような形になる。
 この流れは、条例議案以外の場合も同様と解されるが、ここでは条例議案の修正について述べる(2)
 
(1)立案情報の収集
 まず大切なのは、条例議案の情報を収集することである。特に自治体独自の政策的な内容を含む、いわゆる政策条例の場合、検討に時間を要することが多い。制度設計に当たり、外部の有識者による委員会等で審議する場合もある。また、重要な意味を持つ条例の場合は、首長が記者会見等で制定について発表することも多い。当然、地元のマスコミも取り上げる。このような情報を見逃さないことが大切である。そして、継続的に検討状況を把握することが重要である。外部有識者の委員会等は、通常は会議の傍聴も可能であり、議事録も公開される。これらにより検討状況は追跡可能である。また、議会での一般質問や委員会審議を通じて、検討状況や制定の方針等を質すことも大切である。

(2)パブリックコメント等の分析
 最近の政策条例では、制度設計の検討の過程で、住民意見を把握するため、自治体のホームページなどでパブリックコメントを行うことが多い。また、住民説明会を行うこともある。これらの情報も注視しておきたい。
 パブリックコメントでは、制度設計の具体的な内容が公表されることが通常であり、首長が提案しようとしている条例案のほぼ全容を把握することができる。また、パブリックコメントが行われてしばらくすると、住民や利害関係者から寄せられた意見の内容とそれ
に対する首長サイドの回答が公開される。これにより、住民たちが関心を持っている論点を把握することができる。住民たちが関心を持っている論点と議員自身の問題意識を確認し、議員としてのスタンスを検討することとなる。この段階で、会派内や議員同士で意見
交換することも、チーム議会としての政策論議に通じるものであり重要なプロセスである。
 また、パブリックコメントの手続を始める時点では、首長側では、条例案のいわば詳細設計を示した「条例案要綱」や「逐条解説」などの資料を通常はつくっている。パブリックコメント後に案の内容に変更が生じることもあるが、これらの関係資料の提出を、議会事務局を通じて要求したりすることもありうる。

(3)議会前の議案説明会の活用
 
議会の開会前には、通常、全員協議会などの形式で、首長側から議会に対して、提出する議案の内容について「議案説明会」が行われる。この段階では、「条例案要綱」がほぼ確定しており、この条例案要綱をもとに説明が行われる。議案説明会では、自治体によっては、ある程度の質疑を行うことが可能な場合もあり、議員が問題と考える事項について質問することもありうる。また、議案説明会後に、議員個人又は会派などで関係部局の担当者に説明を求めることも可能である。

(4)修正に関する議員間の議論と方針検討
 
これまでに収集した条例案に関する情報をもとに、条例案の内容について検討をする。その際には、同じ会派の議員や当該行政分野に詳しい議員など複数の議員間で十分な議論を行い、条例案の問題点を明確にして、修正の可否について方針を決定する。方針決定に
当たっては、議会事務局の法務担当に相談し、その上で執行部の担当部局にも条例案の問題点を指摘し対応を確認したり、必要に応じて外部の専門家の意見を聴くことも大切である。また、条例の運用面の問題などはあるが、修正を要さない場合もありえる。その際は、一般質問や議案質疑の際に運用面の課題を質すということも考えられる。

(5)修正案の作成と会派調整
 
会派内で修正の方針が固まった場合、具体の修正案の作成を行い、他の会派とも調整を始め、併せて正副議長、議会運営委員長、関係する常任委員長などに説明しておくことが必要である。
 具体の修正案の作成に当たっては、議会事務局の法務担当に起草又はチェックを依頼することも可能である。修正の具体的な方法としては、議案の一部改正をするのと基本的には同様である。一部改正の方法は、連載第4回(2020年1月27日号)で取り上げた条例の一部改正の方法と全く同じである。この場合、修正案の題名は「○○条例案に対する修正案」となり、修正の方法は、自治体により「改め文」方式と「新旧対照表」方式のいずれかを使用することとなる。

(6)議事日程の調整
 
会派間の調整がつき、修正案が固まると、議事日程を検討する。通常の修正案の提出は、条例案の委員会審査の際に行われることから、委員会の議事日程を検討する際に調整する。修正案は、委員からの修正動議として委員会に提出される。なお、修正動議は当該委員会に所属する議員が提出することとなるので、修正案の検討メンバーには、当該委員会の所属議員が含まれている必要がある。また、議会事務局とあらかじめ協議し、議事の進行シナリオである次第書の作成の際に、修正動議が提出されることを想定した次第書を議会事務局でも作成しておく必要がある。このような準備をした上で議会の開会を迎える。

(7)本会議における質疑等
 
議会が開会されると、執行部側の提案理由説明が行われ、提案理由説明に対する質疑が行われる。また、一般質問も行われる。条例案の修正に当たり、これらの質疑や一般質問の際に、提案されている条例案の課題について、首長側と議論しておくことも大切である。

(8)委員会での修正
 
条例案が委員会に付託され、所管委員会で審議をする際に、いよいよ修正動議を提出することとなる。動議の提出に当たっては、委員会審議において執行部側と議案について十分に議論した上で動議を提出する。その結果、修正案が可決された場合、提案された条例案に修正案が溶け込んだ状態で条例案が可決されることとなる。

(9)本会議での委員長報告と採決
 
委員会後に開催される本会議では、所管委員長が修正の内容・審議経過を報告する。その後、委員長報告への質疑、討論、採決が行われ、可決されれば、修正された条例が成立することとなる。

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