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2020.02.10 女性議員

第30回 女性と政治:女性議員の増加の手法(下)──地方選挙補論Ⅰ──

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5 女性議員の少なさからの脱却の方途

 女性議員増加の方途について考えたい。想定される主な方途に限定する。

(1)縮小社会における女性議員の増加の意義の確認
 まず、女性議員の少なさの問題と増加させる意義を確認することが必要である。すでに指摘したように、女性議員の増加は、政策上の偏差や宴会政治による水面下の政策決定といった問題からの脱却という意義がある。
 とりわけ縮小社会において、公共施設等の統廃合をめぐる議論では、生活の視点からの発言・政策提言が求められ、それには女性が大きな役割を果たす。新シビル・ミニマムをめぐる政策議論では女性、及び女性議員は主導的に活躍することになるし、それが期待される。
 これを広めるには、以下の項目と連動させることが必要である。

(2) 議会・議員の魅力の向上・周知
 議会・議員の魅力が伝わらなければ立候補しないことは、男性も女性も同じである。しかし、強力な社会規範・組織規範が存在する以上、女性にはより強力にその魅力が伝わらなければ、これらの規範を突破できない。従来は、単一争点(シングル・イシュー:環境、子育て等)をテーマにした「怒りの思い」による女性の立候補者・議員も少なからずいた。今後は多数派になるために、それとともに地域経営全体の視点からの議会・議員の魅力の発見が期待される。
 議会サポーター制度(長野県飯綱町議会)、議会(だより)モニター制度などは住民が議会を知り、応援する制度である。飯綱町議会は、この制度を女性議員の増加を意識して取り組んでおり、その成果も上がった。
 本連載はまさに議会・議員の魅力向上・周知を追求している。なお、なり手不足問題の深刻化の打開策とも連動している。

(3) 政党・自治体の具体的・実効的な対応
 政党の対応については、候補者男女均等法との関連ですでに指摘した。ここでは、自治体の対応について確認しておこう。
 候補者男女均等法は、自治体にも候補者男女均等を求めている。少し古い調査ではあるが、地方議会では1%のみが対応を始めている(「議員増へ海外でも模索」読売新聞2018年9月8日(同年7月23日から8月23日までの調査))。その中には、議会のホームページに女性比率などを掲載(北海道遠軽町議会)、女性が立候補しやすい意見交換会の開催(滋賀県草津市議会)、女性議員が候補者男女均等法の解説を行うセミナーの開催(静岡県沼津市議会)、県庁内の他部署の対応予定の聞取り(熊本県議会)といった対応が見られる。
 選挙権年齢の18歳以上への引下げに伴う主権者教育の活性化を活用することが考えられる。少ない女性議員の問題と増加させる意義をその中に位置付ける。また、議会基本条例に多様性を明確に書き込むことも必要だ(【キーワード】参照)。

☆キーワード☆
【多様性の尊重を明記した議会基本条例(下線は筆者)】
〔(長野県)上松町議会基本条例(平成23年3月16日)〕
  第4章 議会の運営
(会議及び委員会)
第5条 議会は、常任委員会等議会の組織を十分に活用し、町民の意思を町政に反映させ、町政の議決機関として、責任ある議会運営に努めなければならない。
2 議会の本会議及び委員会は、秘密会を除き公開とする。
3 議会は、幅広い町民が議員として活動できるように、会期及び開催時間等を常に検討するものとする。

〔(神奈川県)秦野市議会基本条例(平成23年6月9日)〕
  第4章 市民と議会の関係
(市民と議会との関係)
第8条 議会は、第3条に規定する活動原則に基づき、開かれた議会となるよう次に掲げる環境の整備に努めるものとする。
(1) 男女が等しく議会に参画し、政策等を提案する機会を確保することができる環境
(2) 性別、年齢、職業、思想信条、障害の有無にかかわらず、市民が議会に議員として活動することができる機会を得ることができる環境

〔(埼玉県)八潮市議会基本条例(平成31年3月20日)〕
  第4章 議会の機能強化 (多様性の尊重)
第9条 議会は、議会の機能強化のため、議会活動と、育児・介護等が両立できる環境整備等に努め、多様な立場の市民の声が反映されるようにしなければならない。

 

① 産休の制度化や育児支援
 出産によって議会を欠席する場合、従来は「事故」扱いだったが、明確に「出産のために出席できないとき」を追加する会議規則も増加している。活用する議員も増加しているし、議長が産休をとった議会もある(群馬県榛東村議会)。
 託児所や授乳室なども随時整備することが必要である。
 ただ、選挙運動期間や議員の性格上の保育所入所基準の厳しさなど、女性議員・候補者にとって不利益に作用することもある。女性だけの問題ではないとはいえ、集中的に女性には降りかかる。その打開策を自治体が考える必要がある。なお、育児手当支給は、議員の性格の不明確性から(パーマネント(常勤)とはみなされていない)、困難である。そこで、ベビーシッター、介護者を頼む場合の経済的負担を援助する「経済的」支援策は必要だろう(【キーワード】参照)。

② 傍聴の促進
 子ども同伴可能な防音設備のある傍聴席設置も重要ではあるが(例えば、沖縄県那覇市議会)、傍聴席自体を開放的にしてもよい。子どもが泣いた場合、同伴者とともに退席すればよいし、その泣き声自体も「開かれた議場」として肯定してもよい。傍聴に関する規則を住民参画を奨励する規則(北海道福島町議会)に変える試みもその一つである。

③ バック・アップスクール
 政党はバック・アップスクールを開催している。議会もそれを積極的に開催すべきである。選挙管理委員会の開催も進めたい。北海道浦幌町議会では、個人個別研修会を選挙前年の2018年に5回開催した。その参加者のうちの1人(25歳)が立候補して当選した。このようなバック・アップスクールの中で積極的に女性候補者増加を意図した企画や呼びかけを行ってもよい。議員ネットワークによるバック・アップスクール開催の歴史は古い。

④ セクハラ・パワハラ対策
 女性議員へのハラスメントは世界でも問題にされ、列国議会同盟(IPU)は相談窓口の設置や第三者による調査を求めている(「女性議員にセクハラの壁」毎日新聞2019年1月6日)。内部統制型リスクマネジメントが注目されている(2017年地方自治法改正)。これを議会に活用することも考えてよい。
 

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