2020.01.27 コンプライアンス
第19回 アナログだけど大事なツール(ビラ編)
解説
解説1 政治活動用ビラ
1 原則は自由
2 規制
解説2 設問の検討
解説1 政治活動用ビラ
公職者等が自身の政策や主張を有権者に的確に伝え、知ってもらうために、政策や主張をまとめたビラを配布することがスタンダードな方法として知られています。
しかし、ビラに何を書いてもよいわけではありません。以下、ビラに関して問題となりえる公選法の規制を検討してみましょう。
1 原則は自由
原則として、公職者等や後援団体、政党などが作成する政治活動用ビラの記載内容は自由です。自身の活動報告や報告会の開催告知、後援会の宣伝等もできます。
また、政治活動用ビラの配布方法について、公選法上特段の規制は設けられていません。自ら街頭演説の際に配ることも、業者に依頼してのポスティングや後援会を通じた回覧配布なども自由に行えます。
2 規制
上記のとおり、政治活動用ビラの内容や配布に関しては、原則として公職者等や後援団体、政党等の自由となっていますが、選挙運動との関係や他人の名誉等の保護から規制が存在します。
(1)事前運動の禁止(公選法129条)
これまでの他の政治活動と同じく、選挙運動期間外に特定の選挙に向けた特定の候補者等の当選に向けた選挙運動を行うことは、事前運動として禁じられています。
政治活動用ビラはあくまで政治活動に用いられる範囲で認められており、特定の選挙に関して特定の公職者等への投票や支持又は不支持等を呼びかけるような内容の記載をすることは認められません。
また、ビラの配布方法にも気をつける必要があります。例えば、内容が政治活動に関するもので事前運動に当たらない場合でも、配布の時期が選挙告示の直前であったり、配布に当たって「Aです。よろしくお願いします」などと言い添えたり、通常のビラでは後援者などの一部に限っていたのを選挙前に限って全戸配布するなど、時期・態様・方法によっては配布行為が選挙運動のため、すなわち事前運動と解釈されるおそれがあります。
(2)あいさつ状の禁止(公選法147条の2)
公選法は、公職者等が自身の選挙区又は選挙区域内(以下「選挙区域内」といいます)にある者に対し、原則として年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状を出すことを禁じています。
ア 主体
公職者等、すなわち現に公職にある者に加え、公職の候補者になろうとする意思のある者は、いまだ立候補していなくてもすべて含まれます。
イ 相手方
当該公職者等の選挙区域内にある者です。公選法199条の2と同じく、選挙区域内に居住する有権者にとどまらず、一時的に選挙区域内にある者や選挙権を有しない者、選挙区域内に支店や営業所などを有する法人や法人格のない団体も対象者です。
ウ 禁止の対象
条文は「年賀状、寒中見舞状、暑中見舞状その他これらに類するあいさつ状」としており、いわゆる時候・季節のあいさつ状と考えられるものは、上記「あいさつ状」に当たります(条文の「類する」に当たります)。したがって、節句のあいさつや喪中の欠礼あいさつ状なども含まれることになります。
公選法は「電報その他これに類するものを含む」と対象に幅を持たせており、「あいさつ状」としての内容を有する書面であれば、ビラであってもこれに含まれると考えられます。
もっとも、時候のあいさつだけを記載したビラを作成することは考えにくく、政治活動用ビラが「あいさつ状」となるのは、ビラの記事の大半が時候のあいさつで占められているような場合や、主義主張などが書かれていても内容がほとんどなく、主として時候のあいさつを目的としたようなものに限られると思われます。
「確認団体」は、地方選挙については知事選挙、指定都市の市長選挙、特別区の区長選挙、都道府県及び指定都市議会議員選挙で認められています。
ここでいう確認団体とは、以下の団体です。
【知事選挙、指定都市の市長選挙、特別区の区長選挙】
① 政党その他の政治団体
② 所属候補者又は支援候補者(いわゆる無所属候補者で当該政党その他の政治団体が推薦し、又は支持する候補者を有すること)
③ 当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けることの要件を満たした団体(公選法201条の9第1項ただし書・3項、266条、公選法施行令129条の4第2項)をいいます。
【都道府県及び指定都市議会議員選挙】
① 選挙の行われる区域を通じて3人以上の所属候補者(再選挙・補欠選挙・増員選挙のときは1人)を有する政党その他の政治団体
② 当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会から確認書の交付を受けることの要件を満たした団体(公選法201条の8第1項ただし書・2項・3項、201条の6第3項、公選法施行令129条の4第1項)をいいます。
一方で、ここでいう確認団体に当たらない政党その他の政治団体は、選挙時にそもそも政治活動用ビラを配布することができません。
具体的な内容については、連載第10回「政治活動の要『後援会活動』(選挙時編1)」(2018年11月26日号)で説明していますので、ご参照ください。