2020.01.27 議員提案条例
第4回 議論する議員提案条例②─既存条例の一部改正の手法とメリット─
2 独自の政策条例は、なぜ軟性条例化しにくいか
本来、社会の変化に対応して、独自の政策条例でも柔軟に改正を行うことが求められるはずであるが、独自の政策条例は、なぜ軟性条例化しにくいか。その要因としては次のようなことが考えられる。
第1に、職員の「政策法務」に対する「慣れ」の問題である。国の法令に基づく条例改正が行われる部署では、複数の条例担当者が常に配置され、しかも日常的に法律を読み、解釈、運用が行われるため、その法律についての内容に精通していく。我が国の法律は一定のパターンがあるので、自ら担当する一つの法律に精通していくと、他の法律についても、ある程度応用が利く。こうして、いわゆる「政策法務」に慣れていくのである。一方、独自の政策条例の担当課では、制定当初は「政策法務に慣れた職員」が配置されるが、その後は継続的に職員配置がなされない傾向となり、結果として、条例改正に対する職員のモチベーションが高まらない状態になるのである。
「第2に、改正の「手続」と「職員の意識」の問題である。国の法令に起因する条例改正と異なり、自治体独自の政策条例を制定改廃する場合、自治体が一から作業をする。このため、制度の基本設計から始まり、外部の審議会等の運営、制度骨子の策定、関係団体や庁内関係課との意見調整、案文作成、議会対応などの手続をすべてこなすには、大変な労力を要する。条文が多岐にわたる条例案の新規制定では年単位の手間を要する。比較的大規模な改正も同様である。特に関係団体や庁内の調整には多くの苦労が伴う。多忙な自治体職員にとっては、独自の政策条例の制定改廃は、できれば避けたい仕事ということになる。
第3に、トップの政策法務への「理解度」の問題である。上記の2点により条例改正に消極的な組織風土が形成され、独自条例の制定改廃はボトムアップでは行われにくい条件がそろってしまう。そうすると、独自の政策条例の制定改廃の言い出しっぺは「トップ」ということが多くなってしまう。しかし、自治体のトップは、必ずしも独自条例の制定改廃の基礎となる政策法務の素養があるわけではない。残念ながら、むしろ、政策法務に対して理解を示すトップ層は多くはないのが現状であろう。自治体組織が独自条例に消極的になってしまう傾向とトップ層の理解の低さが相まって、かくして一度制定された独自の政策条例は硬性条例となってしまうのである。