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2020.01.10 話し方・ファシリテーション

第3回 議会報告会に話し合い成分を追加してみる

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 ここで心配されるのは、「丸シールによる2択」による意見表明が、議会の議決と逆になる場合だろう。だが、そうなれば、「なぜ議会は(丸シールによる2択とは)異なる結論を出したか」を丁寧に語ればいい。実際に、総社市議会の場合も文教福祉委員会はそうだった。2択による可視化は参加者の意見の積み重ねとして参加者の注目も高まり、説明には耳が傾けられる。市内の一部の学校だけでの実施は公平ではない印象について理解できること、一方で試行であり成果によって拡大していく可能性があることが議案に賛成した理由として語られた。
 「付箋紙による意見やコメント」も発話の可視化として重要である。議会報告会で、議事内容の報告は動きがなくて結論が出た内容であり、参加者の関心を得られにくいという意見も従来から聞くが、実際には、例えば議論があった事業はその後も続くことになる。
 総社市新生活交通システム「雪舟くん」は、市直営デマンド交通による交通手段の提供だが、利用料金だけでなく、福祉車両の導入や割引料金など障がいを持つ市民のための対応の充実についての意見やコメントが多く出された。委員会はそれを受け止め、今後の事業展開を議会としても注視し、いただいた意見を生かしていくことが、委員長からコメントされた。
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表 構成と運営のポイント

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話し合いの様子

4 「話し合い」成分の追加と効果

 当日、特に3〜4人1組になって話し合った以降の空気感は、それ以前と大きく異なり、話題をめぐって盛り上がる対話の時間にふさわしい熱気のあるものとなった。
 大勢の前での発話には心理的にもハードルがあるが、自己紹介で簡単ではあるがアイスブレイクをし、各常任委員会で「最も議論となった」点、「2択」という分かりやすい選択肢を示すことで意見表明をしやすくし、さらに付箋紙を用意することで一歩深い意見交換の結果も記すことができる。
 「自分はこう思う」と表明することで、その集積である「参加者の選択の結果」とそれをめぐる意見交換は、市民から主体的に耳を傾けられる時間となる。議会から、出された意見への姿勢と対応がコメントされれば、それは会場の市民と議会との意見交換になる。
 こうした意見交換は、当然ではあるが、事後、最初の常任委員会で報告し、議会だよりなどにも掲載するとよいだろう。
 フォーラム開催当時の議会運営委員会委員長であった頓宮美津子氏は、「参加者の各自の意見がペーパーに具現化し、共有され、徐々に参加者の表情に充足感が見られた。今後の意見交換会の進め方のヒントとなった」と回想する。終了後のアンケートでは参加者から好意的な反応や「意見収集、ほぼ的確な答え」となっていたと評価された一方で、通常とは異なる進行に戸惑った反応や時間配分についての苦言もあった。何を何のためにどのくらい話し合うのか、意見が出やすくなる問いかけの仕方など、分かりやすく丁寧に伝えることは常に課題である。前述したとおり、総社市議会は2018年からは地区ごとの協議会等を窓口に意見交換会を開催し、ワークショップ形式による「対話の機会」を進めているが、本事例は一般的な議会報告会に話し合い成分を加えることで、実りある意見交換ができる好例と位置付けられるといえよう。
 本稿の作成には、総社市議会と議会事務局の皆さんにご協力をいただいた。各位、また当日の参加者の皆さんにも、改めて感謝申し上げる。

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