2020.01.10 話し方・ファシリテーション
第3回 議会報告会に話し合い成分を追加してみる
3 「話し合い」成分を追加してみよう
では、ここで事例を紹介したい。2018年2月に行われた総社市議会報告会は、形式としては一般的な議会報告会に、「話し合い」成分を足して、効果を上げた例といえる。
●総社市議会と議会報告会(2018年2月)
岡山県総社市議会は定数22人、総務生活委員会、文教福祉委員会、産業建設委員会の三つの常任委員会を持つ議会である。
今回紹介する「議員と市民の意見交換会」は2018年2月のもので、2017年度は5月に市内6か所、ワークショップ形式で開催している。2018年2月の報告会を紹介するのは、90分の開催時間(この前に筆者が話題提供を兼ねた60分の講演会)、講義型の会場で壇上から3常任委員会の活動を報告する、多くの議会報告会と共通した形式に「話し合い」成分を加えた、汎用性のあるものと思われるからだ。
●用意したシカケ
・ 各常任委員会で「最も議論になった点」について、Yes/No又は2択で答えられる質問文(以下「Yes/No質問」という)
・ 座席を3ブロックに分けて参加者が話題を選択できる座席配置
・ 話し合う3人、4人グループがつくりやすいよう着席を誘導する。1列2人で前から着座してもらうようにする(図1)
図1 会場座席配置
●用意した物品
・ 丸シール(参加者に1枚ずつ配布)
・ 意見・コメントシート(参加者が事前に見て話題を考えるなどできるように。記入・回収は必須ではない(図2))
図2 意見・コメントシート
・ のり付き付箋紙(意見・コメントシートに貼って配ると便利)
・ 各常任委員会のYes/No質問を書いた画用紙
・ ホワイトボード
●総社市議会報告会(2018)の運営と「効果」
上記したように、用意する物品もシカケも大きなものではない。
一般的な議会報告会と異なるのは、「各常任委員会で最も議論になった点」について、参加者の意見交換と、参加者の意見表明を得て、議会ともそれを交わす場面をつくることである。
まず、事前に「各常任委員会で『最も議論になった点』について、Yes/No又は2択で答えられる質問文(Yes/No質問)」を用意する。予備知識がなくても、その場で報告を聞いて、自分としてはどちらの意見かを決められる情報を、報告の中に入れておく。
当日は、来場者に、受付で「丸シール」と「のり付き付箋紙を貼った質問・コメントシート」(図2)を配布しながら、意見交換の場面があること、そのため関心のある委員会のブロックに着席してほしいこと、前から席を埋めていってほしいことを説明する。
議会全体、各常任委員会から報告。報告の最後に、「Yes/No(2択)で答える質問」について来場者の意見を聞きたいことを伝える。その質問を書いた画用紙を用意し、前列から回していくので丸シールを貼ってもらいたいこと、2択だけでなく意見やコメントがある場合にはのり付き付箋紙に書き込めることを説明する。
このYes/No質問は、総社市議会報告会(2018)では、
・ (総務生活委員会)総社市新生活交通システム「雪舟くん」の利用は、一律1回300円で運行されています。この料金は高いと思いますか、安いと思いますか。
・ (文教福祉委員会)英語教育特区は、市内の一部地域のみで行われています。この事業が一部のエリアで実施されていることに賛成ですか、反対ですか。
・ (産業建設委員会)市内の南北道整備が進められています。さらなる道路整備は必要でしょうか、どうでしょうか。
と示された。
画用紙を回していく時間を利用して、参加者が簡単に意見交換する時間をつくる。前から1列目、3列目……と、奇数列の着席者に後ろを向いてもらい、1列目と2列目、3列目と4列目といったように3~4人のグループになってもらう。いきなり話し合えというのはもちろん難しいので、「なぜ今日ここに来たか」など話しやすい話題で1分ずつ自己紹介をする時間も用意する。2択の質問は答えやすく、より深い知見がある参加者の意見やコメントは付箋紙に書き込める。15〜 20分ほどの間に、「2択で丸シールが貼られた画用紙」、「より詳しい意見やコメントが入った付箋紙」が回収されることになる。
その丸シールの様子、意見やコメントを示しながら(図3)、それらについて委員会側からさらにコメントする。
図3 Yes/No質問、コメントを掲示したホワイトボード