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2019.12.25 議員提案条例

第3回 議論する議員提案条例① ─地域課題に根差したニッチ型議員提案条例と地域の機運醸成─

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2 ニッチ型議員提案条例の立法事実のつかみ方

 議員は地域住民の代表であり、その点では「地域のジェネラリスト」であることはいうまでもないが、「チーム議会」の一員としてニッチの専門分野を分担して受け持つことにより、「特定分野のスペシャリスト」でもあるべきであると考える。 
 そのような特定分野のスペシャリストが企画立案する議員提案条例を、ここでは「ニッチ型議員提案条例」と呼ぶこととしたい。 
  「ニッチ型」というからには、狭い分野でも住民にとっては、満足度要因として重要な内容の条例ということになるが、そのような議員提案条例は、どのようにすれば企画立案できるのであろうか。このように条例を立案する際に、条例を制定しなければならない根拠となる事実を「立法事実」という。以下、ニッチ型議員提案条例の立法事実の把握の方法について述べてみたい。

(1)地域との接点の多元化
 地方議員の皆さんに「地域の要望を十分に把握していますか」という質問をすると、多くの方は自信を持って「はい」と回答をする方が圧倒的であろう。しかし、その中身、すなわち「地域」という対象者は、どのような人々を指しているのであろうか。多くの場合、「地域」の中でも「支持者」という特定の層の地域住民を指しているのではなかろうか。もちろん、選挙で選ばれる議員からすれば支持者は大切な存在であり、支持者に即した政策を考えることは大切である。
 しかし、議員は当該自治体の地域全体の代表でもある。地域の中には、支持者以外の住民も多くいるわけであり、支持者以外の住民のニーズを把握することも重要である。また、選挙区制の議会の場合は、自分の選挙区以外の住民のニーズも把握することが求められる。筆者の経験でも、議員提案条例の地域説明会などで、普段接することが少ない選挙区以外の住民の意見を聴いた議員の率直な感想として「新鮮な感覚を覚えた」、「多様な意見を聴くことができた」などの言葉が聞かれた。 
 では具体的に、どのようにすれば支持者以外のニーズを把握することができるだろうか。例えば、次のような方法が考えられる。
 
ア 議会報告会の活用
 近年は、多くの議会で議会基本条例が制定され、その中に議会と住民との意見交換の場の設定が規定されているものもある。議会報告会は、そのような住民との意見交換の場の一つである。議会報告会は、会派や選挙区とは関係なく、自由に住民が参加し、議員にとっては住民が直面する課題を把握する機会にもなっている。そのような住民の生の声から議員提案条例の立法事実となる課題が提起されることもあろう。
 
イ SNSの活用
 現代のようなネット社会では、住民も議員もSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)を活用する例が多くみられる。SNS上では、24時間様々な意見交換が可能であり、うまく活用することにより、アップデートされた地域社会の状況を把握することが可能である。しかし、SNSの活用に当たっては、デマ情報やヘイトスピーチも多く流れている状況もみられることから、情報の選択と確認が必要である。

ウ 地域団体へのフォーカス・インタビュー
 
首長部局では以前から行われている自治体が多いが、地域の様々な団体との意見交換なども立法事実を把握する機会として活用することができる。通常は、地域団体というと、商工会議所や農協等の産業団体や町内会などが想定されるが、このほかに、意識の高い地域のNPOや学生たちとの意見交換を加えてみるのも有効な方法の一つとなりうる。

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