地方自治と議会の今をつかむ、明日につながる

議員NAVI:議員のためのウェブマガジン

『議員NAVI』とは?

検索

2019.12.10 条例

自治体議会のための条例立法の基礎(3・完)

LINEで送る
滋賀大学客員研究員 提中富和(だいなかとみかず)
 
目次

 第1回(10月掲載済み)

  1 はじめに──条例立法は議会の仕事である
  2 議会と立法権の位置付けを再認識する
  3 条例立法権の根源的な根拠はどこにあるのか
  4 条例と法律の関係

 第2回(11月掲載済み)
  5 法律によって条例事項とされている事項
  6 条例の組立て
  7 改正条例も一つの条例である

 第3回(今回掲載)
  8 条例立法の基底にある思考法
  (1)条例で政策をつくるという発想へ
  (2)条例づくりは住民生活の問題発見から始まる
  (3)条例は公益を決定するもの
  (4)条例立法が住民の権利を保障する
  (5)条例立法は議会が行政府を動かすためのもの
  9 議会が条例を評価する
  (1)条例評価の六つの基準
  (2)事後評価によって事前評価を検証する
  (3)事後評価を条例の中に組み込んでおく
  10 おわりに──地域のことは条例立法で自ら治める

 
 

8 条例立法の基底にある思考法

(1)条例で政策をつくるという発想へ
 政策とは、公共的な課題を解決するための公的機関等の活動の方針であって、目的と手段がセットをなすものとされている。そうすると、条例も社会公共の課題を解決するためのものであるから、政策そのものなのである。規範やルールという側面を有するだけではないのである。
 条例には、計画策定などと異なって、強制力を有する強みがある。条例で政策をつくることによって、その強制力という強みを生かすことができる。その強制力は、条例の「住民みんなで決めたことだから」というところから生まれる。ここに議会立法の意味がある。
 条例も政策であるから、課題解決という目的が達成されたかどうかが、Plan→Do→Check→Actionのサイクルを回して検証されなければならない。条例は、「ただ守っていればよい」ということにはならないのである。条例で政策をつくるという発想が重要なのである。

(2)条例づくりは住民生活の問題発見から始まる
 条例は、住民の生活上の課題解決のために立法するものであるから、その出発点となる問題発見は住民生活の現場にある。条例の制定改廃のインセンティブは、法令の制定改廃に伴って中央省庁から「やってくる」ことが多いが、本来はそうではない。条例づくりは住民生活の問題発見から始まるのである。
 とはいっても、法律が網の目のように張り巡らされている中では、自治体での問題発見は、法律の執行の段階でなされる可能性が高い。法律の内容と住民ニーズとの間に「ずれ」が生じていることがあり、このことを問題として気づくことが重要である。ところが、自治体の執行部においては、法律の執行がルーティンワーク化し、執行自体が目的化してしまっていて、「ずれ」があっても、法律に合わない住民ニーズの方がおかしいとして問題視せず、問題を問題と気づかない思考停止状態になっていることがある。ここに住民目線に立つ議員の出番がある。議員こそ、執行部とは違った目線で法律を手段ととらえ、法律は「何のために」あるのかという視点から問題をとらえることが求められる。そこから上書き条例を立法するという道がつながっていく。

この記事の著者

編集 者

今日は何の日?

2025年 424

全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)始まる(平成19年)

式辞あいさつに役立つ 出来事カレンダーはログイン後

議員NAVIお申込み

コンデス案内ページ

Q&Aでわかる 公職選挙法との付き合い方 好評発売中!

〔第3次改訂版〕地方選挙実践マニュアル 好評発売中!

自治体議員活動総覧

全国地方自治体リンク47

ページTOPへ戻る